「まなべる基金」への寄附

高校生対象給付型奨学金「まなべる基金」使途指定寄附金の募集に関わる募金報告書(2019年4月1日~2020年3月31日分)

高校生対象給付型奨学金「まなべる基金」への指定寄付金(募集期間:2019年4月1日~2020年3月31日)について以下の通り報告いたします。
お預かりいたしました、寄付金総額49,439,998円は、「まなべる基金」の奨学金および付随する費用として使用いたしました。ご寄付いただいた皆さまのご支援、ご協力に心より御礼申し上げます。
2020年4月1日以降も、高校生対象給付型奨学金「まなべる基金」の指定寄付金を継続して募集しておりますので、引き続き、多くの皆さまからのご支援をお願い申し上げます。

高校生対象給付型奨学金「まなべる基金」へのご寄附について

収入

まなべる基金使途指定寄附金

49,439,998円

利息

731円

収入合計

49,440,729円

支出

第5期~第8期
(2019年度前期/後期 延べ324名分として)

26,375,000円

台風19号追加奨学金(※1)支払

1,000,000円

送金時手数料

247,504円

支出合計

27,622,504円
  • ※1 2019年10月に発生した令和元年台風第19号で被災された、満20歳以下の「まなべる基金」奨学生がいる世帯を対象とした追加奨学金支援

次年度への繰り越し

繰越金(収入-支出)※2

21,818,225円
  • ※2 繰越金については、2020年4月以降の奨学金および付随する費用として使用いたします。

「まなべる基金」について

公益財団法人東日本大震災復興支援財団では、東日本大震災発生を受け、2011年11月に高校生対象給付型奨学金「まなべる基金」を創設いたしました。
これまでまなべる基金では、

第1期(2012年4月給付開始)1,192人
第2期(2013年4月給付開始)815人
第3期(2014年4月給付開始)472人
第4期(2015年4月給付開始)87人
第5期(2016年4月給付開始)77人
第6期(2017年4月給付開始)91人
第7期(2018年4月給付開始)76人
第8期(2019年4月給付開始)63人
第9期(2020年4月給付開始)48人

を対象に支援を行っております。
また、2020年3月には、69人が無事卒業し、それぞれの新しい道を進むことになりました。「まなべる基金」を受給していた卒業生から、寄付いただいた皆様へメッセージをいただきました。是非ご覧ください。

  • ※3 支援決定後の辞退などがあったため、発表時の人数と支援人数とは若干異なります。

「まなべる基金」2019年度卒業生からのメッセージ

■震災当時、宮城県石巻市に在住していた奨学生

【震災当時の話】

 震災が起こった当時、私は小学校3年生で、いつも通っていた小学校が避難所になり、正直何が起こっているのかわからない状況でした。私の家族は4人家族で、父は会社員、母は保育士をしていました。当時、父は学校近くの会社に勤務していたため、発災直後すぐ迎えに来てくれました。 父の顔を見た時、泣いてすがったことを今でも覚えています。母は報道の多い大川小学校近くに勤務しており震災後すぐには帰って来ず、父と妹と私の3人で車で一夜を明かしました。

住んでいた団地の人たちは、地震、津波の恐怖から避難した世帯がほとんどで、団地はまるでゴーストタウンのようでした。家の中もめちゃくちゃでライフラインも止まってしまったため、しばらく避難所生活が続きました。避難所には、団地の顔見知りや同級生もいたので安心感はありましたが、余震が止まず、避難所の体育館がギシギシなるたびに恐怖が襲って来たことを覚えています。私の住んでいた地域では津波被害は全くなかったのですが、より被害の大きい地域からの人たちが次々と避難されてくることになり、私たち家族は自宅に戻ることを決意し、しばらく、家の中を片づけながら夜はロウソクを灯しての生活を続けました。

小学校のクラスは震災の影響で転入・転出が激しく、クラスメートも入れ替わりが激しかったです。ただ、一方で、東京から災害支援の先生が副担任として加わっていただいたことで楽しい思い出も増えました。

【応募のきっかけ】

 中学校の担任から「まなべる基金」について知りました。震災の影響で震災1年後に父が体調を崩し、仕事も休まざるを得ない状況が長く続き、家の収入も減りました。そのような状況ではあったものの、私は子供の頃から続けている大好きなマーチングを続けたい、そしてマーチングで評判の高い茨城県立大洗高校に進学したいという強い想いがありました。その想いを担任の先生に相談したところ、「まなべる基金」を紹介してもらいました。家庭の経済状況を考え、「まなべる基金」が両親に負担をかけない給付型奨学金であるということを知り、応募に至りました。

【高校生活で頑張ったこと】

 高校生活はマーチング部の活動を一生懸命頑張りました。マーチングバンドとは楽器を持ちながら演奏・演技するものです。年間約100回の演奏の機会を頂き、3年間合計で300回程度に演奏しました。特に2019年度は大きなイベントがたくさんありました。佐賀県で行われた全国高等学校総合文化祭、3年に一度のオーストラリア遠征、第47回国民体育大会(通称茨城国体)では新天皇皇后両陛下の前で披露させていただきました。そして、毎年出場しているマーチングバンド全国大会では、8年ぶりに中編成の部で最優秀賞を勝ち取ることができ本当に嬉しかったです。

 この3年間はあっという間でした。練習は平日4時間、休日8時間、強化練習の時は14時間の時もありました。宿題をしないと部活動は参加できないので、勉学も手を抜くことができません。休日は月に1度だったので本当に部活動にのめり込むことができました。つらいこともたくさんありましたが、部訓「走ること」「我慢すること」「夢を持ち続けること」を胸に頑張りました。部活の顧問の先生との繋がりは深いのですが、どうしても困ったときは担任の先生に話を聞いてもらったり、一緒に解決してもらったりしました。部活を超えた意見を聞けることはとても新鮮で、ありがたかったです。

【まなべる基金の奨学金の用途】

 オーストラリア遠征の遠征費や学費の一部にあてさせていただきました。

【今後の進路について】

 入学当初は警察官になり白バイに乗り、音楽隊の所属を希望していましたが、公務員試験を受けるまでの学力が足らず断念せざるを得ませんでした。そんな折、学校から日頃の努力を認められ、茨城県にある製鉄会社を紹介してもらいました。会社見学では、非常に魅力的な部分に惹かれ、「この会社で頑張るぞ」という気持ちになり、正式に学校にお願いすることに決めました。

 地元の石巻市に戻ることも考えましたが、高校での活動を十分に認めてもらえたのは茨城県であったため、自分の経験を活かせる企業を選びました。 また、就職先が工業地帯といった点では石巻市と似ており親近感がもてます。

【地元を離れたからこそ見えた視点、そこからの気づき】

 私の住んでいた石巻市河南地区は、震災の際もガスや食材を分け合ったりする「助け合い」や「繋がりの大切さ」が当たり前の地域でした。「当たり前のことを当たり前に」という心は、自然に養われていたのだと気が付きました。それは茨城での高校生活でも役立ち、悩んだ時や辛い時、いつでも原点に戻れることができたと思っています。これからは宮城を離れ茨城で生活をしていくことになりますが、石巻で得たことを生かし、仕事を頑張ることこそが地元への貢献と考えています。

【家族への思い】

 中学校卒業したばかりの自分を一人で茨城県に送り出してくれたこと、帰宅の度に片道4時間かけ送迎してくれたこと、そして、自分を信じ続けてくれたことなど、言葉にならないくらい本当に感謝しています。ありがとうございました。

【まなべる基金をサポートしてくれる方々へ】

 これまで充実した3年間を送ることができたのも寄付をしていただいた方々のおかげと感じており、心から感謝しております。まなべる基金のサポートがあったからこそ高校生活で得られたものが大きかったので、もし将来願いが叶うなら、こうしたまなべる基金のような奨学金の活動に協力できる社会人になりたいと思っています。 まずは一日も早く仕事を覚え、社会に貢献できる大人になりたいと思っています。 支えてくださった皆さま、本当にありがとうございました。

まなべる基金担当より

 まなべる基金の担当となり今回で5回目の卒業式取材となりました。

 奨学金業務においては、普段、学校を通じて奨学生の方々との連絡を行うため、生徒の方たちと直接やり取りすることはほとんどありません。 そのため、卒業式取材の人選においては、事前に奨学生の方のお人柄やお顔がわからず、実は思いのほか苦労し、心を割いています。
 取材対象の方が決まり、事前に電話調整はさせていただくものの、卒業式当日までお会いすることがないため、担当者としても毎年良い意味で緊張しながら当日に臨んでいます しかしながら、今回の取材も含めてですが、これまで卒業式取材でお会いした生徒の皆さんは本当にしっかりした方ばかりで、私の事前の心配はありがたいことに毎年杞憂に終わっています。

 今年は、新型コロナウィルスの影響で直前まで卒業式の開催が危ぶまれたものの、規模縮小で卒業式が開催され、生徒さんにも無事お会いでき話を伺うことができました。 彼の充実した高校生活において、まなべる基金の奨学金が何らかの形で少しでもお役に立つことができていることを知り、 この給付型奨学金が存在する意義の大きさを改めて実感しました。
 今回も、素晴らしい生徒さんに出会いお話を伺えたこと、そして彼の晴れの舞台に同席させていただいたことを、本当に光栄なこととだと感じています。

 3年間親元を離れた環境で学生生活を送り、その中で自立心を身につけ、明るくたくましく前向きに自分の道を進んだSさん。彼のこれから歩む未来が多くの良き出会いに恵まれるものであることを強く願います。

本寄附に関するお問い合わせ先

〒105-7535 東京都港区東海岸1丁目7番1号 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー
公益財団法人子ども未来支援財団 「まなべる基金寄付金担当」宛
TEL:03-4360-3766 (平日10:00-12:00 / 13:00-17:00)