「まなべる基金」への寄附

「まなべる基金」2023年度卒業生からのメッセージ

歌を通して震災を語り継ぐ

【震災当時の話】

 当時住んでいたマンションの状態が酷く、生活することが困難だったため、仙台市内の祖父母の家に避難しました。父は職場がある石巻市にいたため、津波によって音信不通となり、ようやく安否が確認できたのは震災発生から2週間後でした。また、名取市閖上に住んでいた祖母は自宅の2階に避難し、翌日自衛隊に救助されました。父と祖母の安否が確認できるまでとても不安で辛かったのを覚えています。
 その後、テレビで仙台南高校の合唱団が出演している姿を見て、私も仙台南高校音楽部合唱団で活動したいと考えるようになりました。仙台南高校の合唱団はコンクール等で県外への遠征が多くなることが予想されており、妹の進学も控える中で経済的に困っていたところ、母がまなべる基金を見つけてくれて応募しました。

【高校生活で頑張ったこと】

 仙台南高校に入学後は、音楽部合唱団に入部し3年間部活動を頑張りました。練習はハードでしたが、多くの人へ歌を届けることにやりがいを感じていました。1年の時に、声楽アンサンブルコンテストの全国大会出場が決まり、練習に対する熱量も増していきました。しかし、大会3日前に福島県沖地震が発生し、開催は中止となりました。とても悔しかったですが、この悔しさを糧に1年間練習に励み、翌年再び全国大会に出場することができました。ステージに立った時の景色は本当に感動しました。
 また、仙台南高校の合唱団は震災当時、高校2年生だった部員を東日本大震災の津波で亡くしており、震災を忘れず語り継ぐ活動を積極的に取り組みました。合唱団では代々「わせねでや(東北の言葉で『忘れないでね』という意味)」という歌を定期演奏会やイベントで歌ってきました。
まなべる奨学金は、コンクールの遠征費に充てた他、高校2年の頃から声楽の教室に通い始め、そのレッスン費にも活用しました。

【進路・将来への夢】

 福島大学に進学し、初等教育と中高の音楽の教員免許を取得するため勉学に励んでいきます。その後は宮城県で小学校もしくは中高の音楽の教師として働きたいと考えています。その際、東日本大震災について伝えたり合唱団で歌い続けてきた「わせねでや」を授業で扱うことで、児童、生徒に東日本大震災について知ってもらいたいです。

【寄付者へのメッセージ】

 寄付者の皆さま、本当にありがとうございました。奨学金のおかげで合唱団で多くの経験ができました。高校3年間の経験から得たものは私の人生にとってかけがえのないものです。これからは高校での経験を生かしながら大学で教育や音楽について深く学び、東日本大震災を風化させないためにも教師になりたいと思います。これまで本当にありがとうございました。

【まなべる基金の奨学生の皆さんへ】

 自分が挑戦したいことや頑張りたいことを諦めず、高校生活を楽しく思い出に残るものにしてほしいと思います。

笑顔と安全を守れる救急救命士に向かって

【震災当時の話】

 当時5歳だった私は保育園へ登園していました。今でも思い出すほどの強い揺れが私たちを襲い、すぐに保育園の校庭へ避難をして指示を待ちました。次第に日が落ちて暗くなり、先生たちが車のランプで私たちを照らしてくれました。その後、近くの小学校へ避難をして母の迎えを待ちました。
 当時住んでいた仙台市若林区の自宅は人が入れないほど崩れてしまったため、母の実家がある気仙沼市へ避難しました。そこからの記憶はあまり鮮明ではありませんが、唯一、市内で起きた大規模な火災は今でも鮮明に思い出すことができます。
 高校では、部活や資格取得を頑張っていきたいと思いましたが、母一人では経済的に難しい部分がありました。その時にまなべる基金の存在を知り応募を決めました。

【高校生活で頑張ったこと】

 高校では漢字検定や保育検定などの資格取得に向けて勉強に励んできました。持病の喘息が悪化し、入退院を繰り返しましたが、多くの友人が周囲にいることで、文化祭や体育祭などの楽しい思い出を作ることができました。
 まなべる基金でいただいたお金は、通院等で受けられなかった授業を勉強するための参考書の購入費や、資格の受験料、学校へ通う定期代など、さまざまなところで支えていただきました。私の高校生活3年間は友人や家族、先生方、そして寄付者の皆さまの温かさと優しさに溢れていると思います。

【進路・将来への夢】

 将来、宮城県に住む人の笑顔と安全を守れる救急救命士になりたいです。大きなきっかけは2022年3月16日に起きた福島県沖地震です。東日本大震災以来の強い揺れを感じた私は、災害が起きた時に現地に駆けつけ、痛みや苦しみを抱えた人に寄り添いたいと思うようになりました。救急救命士になったら、地域の方々に自分自身の身を守る「自助」と住民同士で助け合う「共助」について、東日本大震災を知っている方だけでなく知らない世代にも伝えていきたいです。
そして、災害といった場面だけではなく、宮城県を年齢や性別を問わず全ての人が安心して暮らせる街にしていきたいです。急病や事故に突然遭うとたくさんの不安や痛みを感じると思います。私は、そのような時に親身に寄り添い、病院へ安心安全に搬送したいと考えてます。今後どんな壁にぶつかっても、自分自身の夢を忘れることなく真っ直ぐに突き進んでいきたいです。

【寄付者へのメッセージ】

 いつも私たちを支援してくれた寄付者の皆さま、本当にありがとうございました。皆さまの温かいご支援のおかげで私は高校生活3年間を豊かに過ごし、自分の夢を追い続けることができました。今後は、精一杯努力をして救急救命士を目指していきたいと思います。

【まなべる基金の奨学生の皆さんへ】

 高校3年間は友人や家族、先生方、寄付者の皆さまに支えられて、楽しく一生思い出に残るものになりました。ぜひ自分の考えている夢や、やりたいことに向かってまっすぐ突き進んで頑張ってください。

本寄附に関するお問い合わせ先

〒105-7535 東京都港区東海岸1丁目7番1号 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー
公益財団法人子ども未来支援財団 「まなべる基金寄付金担当」宛
TEL:03-4360-3766 (平日10:00-12:00 / 13:00-17:00)