東日本大震災から10年が経過し、被害の大きかった地域のハード面における復興はほぼ完了しました。
しかし、福島県では地震と津波、福島第一原子力発電所事故という多重災害によって復興に時間を要しており、今もなお避難を余儀なくされている方が多くいらっしゃいます(2021年7月時点で約3.5万人)。
福島県では、2014年から避難指示が徐々に解除され、住民が少しずつ戻ってきましたが、県内の人口推移をみると、中通り地域・会津地域ではほぼ震災前の水準に戻ったものの、避難が長期化した浜通り地域※では回復が遅れている状況です。
大熊町の子どもたちは、会津若松市にあった大熊町立大熊中学校の仮設校舎で学んでいました。
当時の子どもの人数は、幼稚園、小学校、中学校生徒合わせて14名。
現在は旧会津若松市立河東第三小学校へ移転しており、2023年春には幼稚園、義務教育(小中学校)、一般の方が利用可能な地域一体型施設「大熊町立 学び舎 ゆめの森」が完成予定です。この施設は大熊町の新しい集いの場として期待されています。
2021年3月9日に閣議決定され、4月にスタートした復興庁の第二期復興・創生では、これまでどおり心のケアや子ども支援は継続、そして福島県に重きを置いた取り組みが発表されました。
また、福島12市町村の将来像に関する有識者検討会では、今後の福島の課題として、中核的人材育成や新産業創出、事業の再建などが提言されました。
当財団は、これらの課題解決のひとつとして、産業の創出や事業再建を志した起業を目指す人材を支援することで福島のこれからにつながると考えています。
当財団はこれまで、困難な状況の中でも前向きにチャレンジする子どもたちを支援したいという思いで活動を続けてきました。
震災を経験した子どもたちは成長し、今度は自分たちが地域の子どもたちのためにまちを発展させたいと考え、行動を起こしています。
彼らは、自分たちで東北を盛り上げよう、これからの東北を作っていこうと強い志を持ち、活動しています。
復興再生には、新しい産業などを生み出し、多くの方が来訪したいと思う魅力あるまちづくりが必要です。
人口減少の激しい浜通り地域の復興、発展に向けた魅力あるまちづくり構想には、志を高く持った若者の参画が必要不可欠だと私たちは考えます。
若者たちが浜通り地域に定住し、活動することで、フレッシュな力、これまでにない革新的なアイデアが従来の産業や雇用分野に新たな息吹をもたらすかもしれません。
しかし、一方で、事業運営におけるノウハウ不足や資金面の問題により、やる気ある若者が「起業」に一歩踏み出すことができない厳しい現実があります。また、起業しても相談相手がいなかったり、経営スキルが十分でない場合、継続的に運営することも難しくなります。
当財団は、震災から10年経過し、これから目をむけるべき支援は「福島県の復興創生」だと考えています。
未来の福島のため、自らの手で未来を切り拓こうと浜通り地域での起業にチャレンジする若者を支援するため、起業家応援事業「HAMADOORIフェニックスプロジェクト」を立ち上げ、支援することといたしました。
この地域の若者たちが復興創生を発信する福島のリーダーとなり、次世代の子どもたちにとっての新たな道筋となることを期待します。
また、このプロジェクトで起業し、立ち上げた事業が帰還者や移住者にとっての後押しとなり、さらにはこの地域の将来の子どもたちの雇用にもつながっていくことを確信しています。
「HAMADOORIフェニックスプロジェクト」は、浜通り地域で活動する連携団体と協同で運営します。
現在、福島県の浜通り地域には、子ども支援に特化した団体が少ない状況です。
しかし、本プロジェクトが発足し、活動が活発になり、居住人口が増えることによって、福島県浜通り地域においても子ども支援に特化した任意団体やNPO団体の活動が増えてくることが予想されます。
その時には、東北の各地域で子ども支援を実施しているのと同様に、是非当財団としても支援したいと考えています。そして、将来この地域で育つ子どもが「地域のリーダー」になれるよう、私たちは尽力したいと考えます。