2014年05月08日
2013/7/22-8/25、2013/12/20-12/29、2014/3/21-4/2
北海道、福島、長野、愛媛、静岡、京都、兵庫、長崎、横浜など
932名
ふくしまキッズ実行委員会は、放射能の影響で福島の子どもたちが屋外活動を制限されている状況を改善する支援活動を行うため、自然体験活動を行うNPOが結成した任意団体です。行政に頼るのではなく、市民が力を合わせて、福島の子どもたちの学びと育ちを支援する活動を作り出し、将来の福島を担う人材を育成する体験教育事業を行うことを目的としています。東日本大震災発生後すぐに実行委員会を結成し、2011年夏に活動を開始しました。これまで約3,700人の子どもたちを引き受け、北海道から九州の11地区で最長40日の宿泊体験活動を行ってきました。
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ふくしまキッズ実行委員会
実行副委員長 吉田博彦
1952年大阪府枚方市生まれ。1975年早稲田大学法学部卒業後、横浜で学習塾事業を立ち上げる。1996年まで経営に当たり、その後1997年教育支援協会の設立に参画。1999年、教育分野で最初にNPOとして経済企画庁(当時)の認証を受け全国組織の特定非営利活動法人教育支援協会代表理事に就任。民間からの教育改革を提唱し、文部科学省や教育委員会との協力によって、全国でさまざまな教育事業をおこし、地域教育力の育成を行っている。
吉田 :東日本大震災の直後、原発事故が発生し情報が交錯する混乱した状況下で、福島の子どもたちの避難が始まるだろうと思い、その準備を始めました。同時に、電力需要の問題が出てくるから、関東の子どもたちを対象に北海道でのロングサマーキャンプを計画したのですが、福島県の方から、その計画をそのまま福島の子どもたちを対象にして実施できないかという要望を受けたのが「ふくしまキッズ」の始まりですね。
この募集開始時に、福島県庁で記者会見をしたところ、サーバーがパンクするほどの申し込みがあり、こうした活動にそれだけのニーズがあるのだとびっくりしたことを覚えてえています。そのため当初予定より参加者の受け入れ数を大幅に増やし、2011年の夏にホームステイなどのプログラムを実施しました。2012年からは、2011年の経験から、この活動の目的を単なる「保養」ではなく「教育事業」と位置付け、特に「人との関係性をつくり上げること」に重点を置きました。また、このプログラムが本当に「教育活動」になっているか検証するために、文部科学省から委託を受け外部調査を行いました。結果として、我々が考えている以上にホームステイ先の家族や活動地域の人との関わり合いなどが、子どもたちの育成に繋がっているということが良く分かりました。
吉田 :1年目は、保護者の方の放射能に対する不安が強く、子どもたちは嫌々に送り出されている面もあり、福島を発つ列車の中も暗かったですね。今では子どもたちも意欲的に参加してくれるようになりましたが、最初は、みんな俯いて、もう家に帰れないのではないかと心配している様子さえありました。出発の郡山駅で泣いている子もいましたし、函館に着いた時には「電車から降りたくない」とか「なんで来なきゃいけないの?ここは放射能大丈夫なの?」と言っている子どももいました。子どもたちが放射能の話ばかりしていましたよ。プログラムが始まると、今度は移動用のバスから降りた途端に子どもたちが走り出すんです。例えるなら鳥が籠から飛び出す時みたいに。バーベキューをしたときには、お肉とか焼きそばとかではなくて、きゅうりやトマトばかり好んで食べていたのです。その様子を見た地元の青年会議所の方が、急遽追加で1,000本のきゅうりを用意してくれました。そのきゅうりを水の張った小さなプールに入れて、自由に食べられるようにしたところ、1,000本のきゅうりが2日間であっという間に無くなりました。外で遊ぶということに加えて、食べ物なども制約されていたのだなあと感じました。
吉田:1年目の活動の反省点として、連日プログラムが盛りだくさんだったという点がありました。夏休みは本来、暇なものですよね。その「暇」をどう埋めるかを子どもたち自身が考えて行動するところに価値があるのではないかと考え、2年目のプログラムではあえて「暇」を作るようにしました。そうすると、参加経験のある子たちが初参加の子どもをリードしてくれるようになっていき、全くムードが変わってき ましたね。 そして3年目。3年目になると「ふくしまキッズ」に参加した子どもたちが、こういった「人と関係性をつくり上げる力」という点で、成長が著しいという声をよく聞くようになりました。
吉田:プログラムを提供する全国のNPOについて言えば、この「ふくしまキッズ」という長期の活動を通じて、日本のこれまでの2泊3日という短期間で、先程申し上げたように連日プログラムが盛りだくさんという活動が持つマイナス点に気が付いたことではないでしょうか。 全国の各受け入れ地については、当初は「してあげる側」だったはずが、実際に子どもたちを受け入れてみると自分の街が持っている隠れた魅力のようなものに気が付いたり、受け入れ準備のために協働し、人間関係が再構築されるきっかけになったりと、地域が活性化したという報告がありました。 今では地元の為にも子どもたちを受け入れをしたいとの申し出もあるので、これは大きな変化ですね。
また、ボランティアの学生にも変化がありました。この春の活動に携わった長崎の学生たちは、活動終了後に「もっと学ばないと」と言っていました。現場を経験して体験する価値や自身の課題に気が付いたというところでしょうか。
吉田 :運営側で一番難しいのが、「ふくしまキッズ」に関わっている全国28団体の合意を取っていくことですね。各団体の考え方の違いだとか一つひとつの調整をする時に、実行委員会で議事録を作り、意思決定した記録を規約として残すようにしています。
吉田 :以前は、福島県内で自然体験活動に参加する子どもは多くありませんでした。しかし、震災以降、自然体験活動が「保養」という面だけではない、子どもを育成する上で価値がある活動であると気がつく方が増えたように感じています。
吉田 :支援を開始した、2011年から、「ふくしまキッズ」は5年間という活動期間を決めているので、最終的には、5年間の検証をきちんとやることです。歴史的な事故の検証を残すというのは、後世に対する我々の責任です。万一の事が起こった時に、何がプラスで何がマイナスに作用するかを示すために記録を英文で出版しようと考えています。また、今年は、アメリカからの支援も多くいただいていますので、ニューヨークでも報告会を行う予定です。そして、2016年以降は、「ふくしまキッズ」単体のプログラムとして残すつもりはなく、福島こども力プロジェクトのような、多様な教育プログラムの一部として残せればいいなと思います。
吉田 :まず、「福島こども力プロジェクト」の構想を聞いたときは驚かされました。支援活動をしていると、自分の活動しか考えられないからですから、横目で「あそこのプログラムがいいな」とは思うことはあっても、他団体と自団体がどのようにリンクできるかまで考えていなかったですよね。なので、このプロジェクトを聞いた時には、なるほどと思いました。「ふくしまキッズ」の活動をどう意義づけていくかということを考えたときに、さまざまな活動を俯瞰的にみることで、「ふくしまキッズ」は福島の子どもたちを育成するという全体の教育活動の一部であるということが見えました。今後も「福島こども力プロジェクト」がどう発展していくのか楽しみです。