2015年07月08日
石巻圏の通信制高校生のための学びを通じた居場所作り活動
様々な背景を背負いながら通信制課程高校に通学している高校生を対象に、スクーリング、レポート作成の自習サポートをしながら、学校や家庭以外の「誰か」と繋がりをもてる居場所作りを行い、社会との接点をもつキッカケ作りをする。
【活動地域の状況】 ▶宮城県石巻市において、通信制課程高校のニーズが高まっている。 ・交通機関の復旧が遅れていることもあり、日常的な通学なしで高卒資格を取得できる、通信制課程高校のニーズが高まっている。震災後に、民間の学校法人が新たに通信制課程コースを石巻市に新設していることも、このニーズの高まりを裏付けている。 ・不登校出現率が震災前よりも、震災後に増加している。小学校では、震災前0.32%だったところ、震災後は0.59%となっている。中学校では、震災前3.65%だったところ、震災後3.81%となっている(※出展:文部科学省「問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」(2010〜2012))。通信制課程在学生のうち、約4割は不登校経験者というデータ(出展:文部科学省)があり、不登校出現率の増加は、通信制課程高校のニーズに直結し、今後ますます増加していくものと予想される。
▶宮城県唯一の公立通信制課程である美田園高校の進路未定率が高い。 ・通信制課程生のうち、全国平均では約5割の卒業生が進路未定で卒業すると言われている(出展:文部科学省)が、宮城県唯一の公立高校通信制課程である美田園高校では、約8割の卒業生が進路未定で卒業する(出展:宮城県立美田園高校「学校案内」(2013))。就学、就労することが出来ず、社会との接点を持てずにいる。ニート、引きこもりの最大の予備軍だといえる。
【解決を目指した課題】 通信制課程の性質上、自宅学習でのレポート作成が必要であったり、進学のために授業外での補助学習が必要だが、経済的事情から民間の社会資源(塾、家庭教師等)を活用できない生徒が多い。また、学校行事や部活動がないため、社会的なつながりに乏しく、体験的な学びが少ない生徒が多い。 従って、同校の生徒が中途退学したり、進路未定で卒業しないために、以下の課題解決が大切であると考える。
(1)就学サポート(レポート課題、進学に向けた家庭学習サポート) (3)社会関係資本を得るための、居場所作り(メンタリング、見守り) である。特に既存の関係性や過去の人間関係につまずいている生徒も多いため、(3)に注力することで生徒自身が安心して自分の存在を確認できる場所、相手を見いだし、(1)(2)に繋げていくことが大切である。 ※本プロジェクトは、同校から協力依頼を受け、立ち上げたプロジェクトである。
【育てたい人材育成像】
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【活動時期】2014年10月1日〜2015年3月31日 うち 毎週木曜日 18:30〜20:30
【受援者数】実数(18)名 のべ(約300名)
① 就学サポート(スクーリング課題、レポート課題)
週1回、活動拠点(石巻駅前)にてボランティアスタッフが、生徒の自習課題をサポートした。なお、必要に応じてオンライン教材を用いた。
② 就労サポートのためのネットワーク会議
特定非営利活動法人Switchと連携し、必要に応じて、生徒をバイターンやインターンシッププログラムに繋げた。
③ 居場所作り(見守り)
日常的に他者との関わり合いが希薄な生徒が多かったため、①と合わせてコミュニケーションの時間を大切にし、何気ない会話やつぶやきからラポールを形成し、安心して他者との繋がりを実感できる場作りに努めた。
④ 居場所作り(メンタリング)
様々な背景をもつ生徒(心の不調を訴えるなど)が集まったため、活動拠点には常に専門職(精神保健福祉士、心理士、産業カウンセラーなど、特定非営利活動法人Switchと連携)が常駐し、必要に応じてメンタリングやカウンセリングを行った。また、保護者への同様のサポートも必要に応じて行った。
⑤ 学校との情報交換、ニーズ調整
月1回の頻度で、学校担当者との情報交換会をもち、弊団体での生徒の様子をお伝えするなどして、支援方針を揃えていった。また、新規のニーズの受け入れに向けても話し合った。
⑥ 補助金獲得に向けた行政との打合せ
生活困窮者自立支援法(厚生労働省、平成27年度より試行)及び社会的な居場所作り事業(厚生労働
省予算、既存制度)のいずれかの獲得に向けて、関係部署(石巻市福祉部保護課、宮城県保健福祉部
社会福祉課、各福祉事務所)と打合せを行った。また、一連のやり取りについて、NPO法人
BrainHumanity能島裕介にスーパーバイズしてもらった。
・支援予定人数20人が中途退学せずに、目標とする単位取得が出来る。
→支援予定人数20人のうち、18人の参加に留まったが、中途退学せずに目標とする単位取得をすることができた。
・支援予定人数20人のうち、高卒就労を希望する生徒がバイターンプログラムに取り組む。
→高卒就労を希望する生徒3名がバイターンプログラム(牡蠣剥き体験プログラム、自動車整備プログラム)に参加した。一方で、半年間の面談の中で、プログラム参加まで結びつかなかった、また途中でリタイアするケースもあった。
・単位取得し卒業する生徒が、進路(次の受け入れ先)決定をして、卒業していく。
→2名の生徒が卒業し、進路を確定(進学・就職)を決めた。
・いずれかの補助金を、来年度に向けて獲得する。
→平成27年度のスタートには間に合わなかったが、平成28年度の制度枠での実施がほぼ確定し、現在モデル事業の実施に向けて、石巻市担当課等と打合せ中である。
石巻市は震災直前の要保護・準要保護世帯数が全体の11%でしたが、震災によって全体の43%にまで経済的な課題を抱える児童・生徒世帯数が増加しています。そんな中、行政も少しずつ政策判断を行っていますが、そこまでの課題の掘り起こし、問題の提起、スキームの提案のためには、どうしても民間資金の投入、寄付によっての運営が不可欠でした。無事に2016年度からの制度枠での実施に目処が立ち、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、継続的な枠組みが創れたこと、これによって石巻市の子どもたちを支える1つのセーフティーネットが出来たこと、寄付者の皆さまのお力によるものです。心より、御礼申し上げます。
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