2013年06月27日
大阪に県外避難をしてきた子どもの生活と心を守る保護者支援プログラムや子供のための地域イベント
これまで支援が行き届いていなかった県外避難をしてきている子どもや、支援を必要とする子どもを持つ家庭と出会い、必要に応じた支援を行う活動。 実績としては大阪市社会福祉協議会や区の社会福祉協議会と連携を行い、交流会や相談会、家庭訪問への参加を行うことで子どもとを抱える家庭と出会ったり、支援の広報を行ったりすることができた。また、子どもとの関係を悩む保護者のためには、「臨床動作法を使ったコミュニケーションワークショップ」を行い、親子関係改善を行うための実践を通した勉強会を行った。更に地域の子どもたちと避難中の子どもたちの交流を図るイベントを行い、子どもたちがこれから生活する地域を知り愛着を持ったり、地域の人や仲間とのコミュニケーションの大切さを学ぶ活動を行った。
【活動の背景】
近畿地方には行政が把握しているだけで東日本大震災からの県外避難者が6,000人以上おり、1年以上が過ぎても尚、避難者の数は減らない。また、県外避難者の中には放射能を避けるため関東からの自主避難者も多く、その人数は行政でさえも把握できていないのが現状である。そして、その県外避難者の全体の6割が夫と離れて暮らす母子避難だといわれている。
そういった現状に対し、本団体では被災地支援と並行して「東日本大震災による県外避難中の子どもたちへの相談支援事業」という支援を行なっている。そこでは、避難者交流会での出張相談、電話相談、子どもたちの居場所(土曜日のみ開所)、イベントでの託児、一時保育、また避難している子どもの親で構成する「お茶べり会」へのサポートと託児の提供を行なっている。
支援を行う中で県外避難中の子どもたちが抱える問題は増えてきており、複雑化してきたりしている。例えば、不安定な生活からのストレスや震災のPTSDなどの問題により学校で不安を抱え、不登校状態になっている子ども、生活の様々な場面で感情を抑えられないなどの不適応が起きている子どももいる。また母親たちの中には、子どもとの避難生活に不安を抱え、虐待の心配を訴える者も出てきている。そして新たな問題として震災から1年半が経過した現在では、二重生活の長期化から夫婦間の離婚問題が顕在化し、それが子どもの心身に負担を強いている現状もある。
更にそれだけに留まらず、今回の震災は子どもの将来にも大きく影響している。子どものPTSDに関しては年齢が低ければ低いほど遅く発症し、5年~10年の期間を経て問題が顕在化してくる。これは阪神淡路大震災の事例からも明白である。そういった子どもに関して早期の発見や対応は、子どもの将来を見据えた上で必要なことである。子どもも保護者も被災地に残った者に比べ、生活の支援や「心のケア」を受けにくい環境にある。支援機関や専門的な支援者とつながっていない場合は震災に特化した支援は受けられないことが多いことから、避難先でも充実した、避難者ケアが求められている。
また、これからの生活を考える上で、避難者という生活を続けるのではなく、子どももその保護者も地域で安心して生活していけることが大事な時期である。しかしながら、母子避難であり、転居を繰り返し行っている子どもたちも保護者も地域で住むという意識は持ちにくく、また放射能被害への賠償問題や解決策が見つからないまま支援が減っていくことに不安が大きい時期であった。
【活動の内容】
1.家庭訪問や社会福祉協議会が行う交流会、相談会への参加を通した相談活動
1)参加回数:2012年11月~2013年3月まで月1~2回程度(全7回)
2)参加人数:毎回5名~6名程度(1回2名程度の相談)
2. 保護者向けプログラム 「臨床動作法を使ったコミュニケーションワークショップ」
1)内容:臨床動作法を使い保護者が、「自分も相手も大事にすること」、「相手の気持ちを大切にすること」、「自信を育むこと」、「心を落ち着かせること」などを体験を通して学ぶことにより、避難という不安定でストレスの多い生活の中で起きる親子間の問題を予防したり、対処したりする力をつける。
2)講師:コーディネータとして臨床心理士 種子幸子先生をお招きし、他臨床心理士等の講師に協力を仰いだ
3)対象者:関西全域の0歳~18歳の子どもをもつ保護者(最終日は子どもも参加)※実施中は大学生ボランティアによる託児
4)実施地域:大阪府堺市
5)参加人数:8家族9名の保護者参加(子ども参加5名)※瓦礫焼却問題の時期と重なり、子どもの参加率が低くなった。
6)日程:全日程4日
1回目~3回目:ステップアップ式の動作法練習
4回目:子どもと一緒に行う動作法
3. 子どもたちが地域で安心して生活を行うための地域イベント
1)イベント名:「こどもまち」
2)内容:避難中の子どもたちや地域の子どもたちがその垣根を越えて活動することを目的とし、まちの空き家や空き地をつかってまちに必要なお店や施設を考えてつくり、‘まちびらき’を通して地域の人々をおもてなしをしながら地域の人との触れ合った。子どもたちがみんなでゼロからいっしょにお店を作ることを通して、自分たちの住む地域のことを知って愛着を持ったり、地域の人や仲間とのコミュニケーションの大切さを学んだ。
3)対象地域:避難中の子どもたち 大阪府全域、地域の子どもたち 住之江区、住吉区、西成区
4)実施地域:大阪府大阪市住之江区北加賀屋(まち全域を使用)
5)参加人数:子ども33名(うち避難中の子どもたち6名)、最終日イベント来客数70名程度、ボランティア参加者数50名
6)日程:全日程5日間(大会議は別途2回開催)
1日目 まち探検「まちの魅力を発見しよう!」
2日目 話し合い①「どんなお店にしようかな?」
3日目 話し合い②、作成「お店をつくろう!」
4日目 作成、出店準備「オープンに向けて準備!」
5日目 まちびらき「こどもまちオープン!!」
その他プログラムのために集合して大会議 2回 毎回20~25名が参加
4.報告会 支援者だけではなく、子どもや大学生を巻き込み今回の報告会を行った。
1)参加者:50名
2)時 間:1時間30分
今回の活動を通して、これまで必要であると感じていても実践することができなかった保護者向けプログラムや、子どもたちが地域で安心して生活していくための地域イベントを行うことができた。
保護者向けプログラムの「臨床動作法を使ったコミュニケーションワークショップ」では、保護者が抱えていた子どもとの関係に対する不安の声も、プログラムが進むにしたがって軽減していった。子どもとの関係に関する気づきもあったようで、「動作法をなるべく家で使うようにしたい」という声や、「子どもと一緒に行いたい」という言葉も聞かれた。参加者のほとんどが母子避難であり、子どもとの関係の中で「自分の態度や避難生活が子どもたちにストレスを与えているのではないか」という不安を抱えていたが、プログラムに参加する中で母親自身が自分自身の頑張りに気づき、自分への否定的な感情を肯定することができたことや、自分や他人と肯定的に心地よく向き合うことを学んだことで、より安定した関わりを子どもとの間に築ける自信ができたのではないだろうか。
また「こどもまち」では、これまでのイベントのように「県外避難者」として子どもたちがイベントに参加するのではなく「地域の子ども」として地域の子どもたちと一緒にイベントに参加していただいた。「県外避難者」として地域に受け入れられるのではなく、子どもたちが転居した先で、住んでいる子どもたちと同じように地域で暮らし、夢を持つことを目的としたイベントが行えた。実際に参加した子どもたちは全員がグループの一員として全日程5日間で自分たちの理想の店を作ることによって地域を知り地域について考え、自分たちの好きなまちにしていくことに熱中していた。今回、「まちづくり」を行い、最終日には自分たちが作ったお店に地域の人々をお招きすることができた子どもたちは、とても自信を持ち生き生きと接客を行っていた。最後にイベント修了証をもらうこどもたちは全員自信に満ちた顔をしており、話し合い、協力する中で地域の子、県外避難の子ということに関係なく時間を過ごし、イベントを達成できたのではないかと感じた。
2つのプログラムを通して子どもたちの需要も母親たちの需要も高かったこと、保護者に関しては親子関係だけでなく家族関係への不安の改善につながった者もいたことから、今後もこのような活動を行う必要があり、助成終了後も活動を発展させていく必要を感じた。
<寄付者へのメッセージ>
今回の助成金をいただけたことで、これまで必要だと感じていたが実施が難しかった「親子関係に悩む保護者のためのプログラム」や、「子どもたちが地域で地域の子どもたちとともに楽しい時間を共有したり、地域の人と触れ合ったりすることにより地域で生活していく自信をつけ、地域に愛着をもつことのできるイベント」の開催を行うことができました。避難者の中には安定した生活を送っている方も、すでに地元に帰られた方もいますが、それは決してみんなに当てはまることではありません。現在も健康被害を不安に感じ地元に帰れなかったり、避難先の地域で周囲に頼る人もおらず母子で生活していたり、震災から3年目を迎え被災されている方だけでなく、県外に避難されている方の現状もとても厳しいものになってきています。そんな中このまま震災に特化したスペシャルサポートを行うだけでなく、避難している子どもたちが地域で支えられる支援、地域に馴染む支援、保護者が安定した関わりで子どもと向き合うことのできる支援を行い、徐々にスペシャルサポートではない、地域で生きていくための地域支援に移行していくことが必要であると感じています。
今回の支援を通して、「子どもたちが安心して生活を行うためのプログラム」だけでなく、子どもたちの夢を実現し子どもたちのもつ可能性もみることができました。ご支援いただき本当にありがとうございました。
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