子どもサポート基金 子どもサポート基金特定非営利活動法人NPOカタリバ

2013年06月28日

katariba2.JPG

被災地の放課後学校”コラボ・スクール” 大槌臨学舎

地域全体で子どもたちを育てる放課後学校「コラボ・スクール」を、宮城県女川町と岩手県大槌町で展開し、震災によって奪われた子どもたちの学習環境と居場所を保障するとともに、主体的な学びの機会を提供しています。また、地域の将来を見据えながら、子どもたちのキャリア形成力、郷土愛、問題解決能力を育むための学習プログラムにも力を入れています。大槌臨学舎は2011年12月に開校。中学生・高校生対象に活動を継続しています。2011年度は84名の中学生、2012年度は140名の中学生を受入れ、学習プログラムを中心に多様な教育プログラムを展開してきました。2012年度からは、新たにskypeを用いたフィリピンの講師による英会話プログラム、地域課題課題のため生徒がプロジェクトを展開する「高校生マイプロジェクト」等高校生向けの新プログラムを開始し、60名の高校生が参加しています。

基本情報

活動地域
岩手県上閉伊郡大槌町
活動人数
200名

写真

  • katariba1.JPG
  • katariba4.JPG
  • katariba5.JPG
  • katariba6.JPG

活動の背景・内容

活動の内容

【活動地域の状況】 
(1)幣団体は、2011年12月から、岩手県大槌町で、地域全体で子どもたちを育てる放課後学校「大槌臨学舎」を展開し、震災によって奪われた子どもたちの学習環境を保障し、主体的な学びの機会を提供しています。
 
(2)2012年度は、前年度の実績を踏まえ支援対象を中学3年から中学2年〜高校生まで拡大。生徒の半分は中心部から離れた山間の仮設住宅に入居しており、共働き世帯が多いという環境の中、学びの場を提供するには、放課後でも安心して臨学舎へ通学する手段を確保することがまず必要でした。
 
(3)そのため、自前で町内3方面へスクールバスを運行し通学手段を保障しています。しかし、バス運行費は多額にのぼり、大きな負担となっていました。コラボ・スクール運営の安定運営を行なうために、バス運行も長期的視野にたって効率化・コストダウンすることが重要課題となっていました。

【解決を目指した課題】
(1)中学2年〜高校生までの通学希望の生徒全員に、安全な通学手段を提供し放課後の学習環境を保障する。

(2)学習環境を保障した上で、さらに授業の質をたかめ高め生徒の基礎学力を高めるとともに、子ども達の”生き抜く力”や将来へ希望を育み東北復興を担う人材を輩出するため、キャリア形成力、郷土愛、問題解決能力など多様な力を育むプログラムを整備する。
 
【活動の内容】
(1)今年度の開校
2012年6月21日、大槌臨学舎が本開校し、2013年3月15日まで継続しています。
 
(2)運営
ア.学びの場:上町ふれあいセンターに加え、吉祥寺、小槌神社、大念寺、プレハブ校舎。
イ. スタッフ:開校当初より採用活動を継続しており、現在は講師など大槌町からスタッフ3名、町外からスタッフ8名を雇用し運営しています。またインターンとして常時3名程度のスタッフが長期契約し活動しており、ボランティアメンバーとあわせ教務と運営を担っています。
ウ.送迎手段:1日2便、3ルートで送迎バスを運行しています。
エ.学習に必要な什器・文房具等:全国からの寄付によって賄われています。
 
(3)生徒数・授業内容
ア.生徒数: 
 昨年度(中3生のみ):84名(※津波の被害が甚大で、場所とスタッフの制約があったため)
 今年度(中2生から高3生まで):約200名
イ.授業時間:月曜から金曜まで16:30~21:00。土曜は14:00〜19:00(1日4コマ。1コマ45分)。
ウ.授業回数:生徒毎に週2回〜4回
エ.授業内容
(i)  中学生:
①通常授業:英語、数学(選択科目として、理科・読解力)
②読解力講座
 毎週土曜日に実施。中学2年生と3年生あわせて50名弱。サポーター1人と生徒5、6人のグループワーク形式の授業。文章を読む力と考える力の両方を育てる。
(ii) 高校生:
①プロジェクト型学習
答のない課題に取り組み、解決策を考える力を身につけます。地域社会の課題を学び向き合う力を育てるプログラムとして、生徒自身が課題解決のため立ち上げるプロジェクト支援する「高校生マイプロジェクト」活動がスタート。
②英会話
  机上の勉強だけではなく、英語を使えるようになることを目標に、
毎週2回、フィリピンの先生とSkype英会話を行います。
オ.指導形式
(i) 集団指導授業、個別指導授業
(ii) 中学生はもとより、高校生に対しても、個別指導型の自習室を開放しています。
 
(4)バス運行の利便性向上、効率化
ア.東日本復興財団からの御寄付を元に、マイクロバス1台を購入。2013年2月に納入されています。今年度は、現行のバス運行契約が継続しておりスクールバスとしての運行は行なっていませんが、2013年度の運行のためバス会社と運行業務委託契約を締結。5月8日から運行開始します。
イ.多大なバス運行コストが課題となっていましたが、保有バスに車両を切り替えることで、毎月20万程度運行コストの削減が見込まれます。また、ルート変更や時刻表の変更にも柔軟に対応できることから、今年度はこれまでルートを設定できなかった大槌高校から臨学舎へのスクールバス運行が可能となりました。部活動等のあと、19時以降に徒歩や自転車で通う高校生に安全な通学手段が提供可能となりました。

活動の成果

【活動の成果】
●2013年度から保有バス運行のため、主要路線に関してバス会社と運転業務委託契約を締結しました。

地理的制約から、全ての路線での保有バス切り替えはできませんでしたが、バス運行コストは大幅な削減が達成可能となっています。
●バスを保有する事で、生徒の通学ニーズに柔軟に対応可能となりました。今年度より高校向けの送迎バス運行を開始します。
●2012年度は、84人の中学3年生が卒業。97.5%が第一希望の高校に合格しました。卒業時に行なった生徒向けアンケートでは、コラボ・スクールの満足度は平均9.2点(10点満点)となりました。
●保護者を対象に行った調査では、「コラボ・スクールを他のご家庭に勧めたいですか」との質問に対し、9.4点(10点満点)の評価を頂きました。また全ての保護者が、来年度意向のコラボ・スクール存続を希望しています。

【生徒、保護者からの声】
●5人家族で仮設に住んでおり、3兄妹でひとつの勉強机しかない。家には集中して勉強できる場所がなく、週2回2時間、集中して勉強できる環境ができありがたい。様々な地域からスタッフがあつまり、色々な話がきけるのも魅力。家の再建は目処がたたず、コラボ・スクールが長く続けばありがたい。(中学2年生生徒保護者)
●仮設住宅までの道は真っ暗で街灯もなく、親も共働きで送迎が難しい中で生徒を通わせるためにはスクールバスの存在は必須だった。今後もできるだけバス送迎は継続してほしい。(中学3年生徒保護者)
●コラボ・スクールの活動と、卒業後の「やくそく旅行」プログラムで、自分にはとてつもなく大きな無限の可能性が広がっていると思いました。将来は誰かのために役に立つことをしたいと思います。辛い事にも立ち向かって、くじけてもくじけても何回も立ち上がって自分の未来を作っていきます。(中学3年生生徒卒業時の、「十年後の自分への手紙」より)

【支援者様からの声】
●子どもは国の宝だと思っています。その貴重な命が震災によって沢山奪われ、更に勉強どころではない状況になっていることが気になっていました。子ども達に勉強する場を作り、生活に苦しんでいる先生にも雇用の機会を作っている所に共感しました。長い間支援を続けられるよう、これからもコラボ・スクールを応援していきたいと考えています。(個人寄付者様)
●勉強はもちろんですが、意識の高さや、コツコツ積み上げることなど、多くの事を学ばせてもらっているので、結果的に復興を担う世代にとてもいい影響を与えてもらっていると思います。今の大槌、子どもだけが希望なので、子どものためにいい影響が与えられることだったら、多少お金、手間がかかっても、やるべきだと思う。この町の将来のためにコラボは欠かせません。(大槌町内の個人寄付者様)※地域や生徒、保護者の方からは「コラボ」の愛称で定着しています。

 

【カタリバ東北復興事業部から】
●コラボ・スクールは、「こどもサポート基金」は第一期より継続してご支援を頂いており、第一期では運営費全般、第二期では大槌臨学舎の新校舎の建築費に関してご支援頂きました。寄付者の皆様のご協力に深く感謝します。
●震災から2年以上が経過し、大槌町・女川町ともに復興に向けての自律的活動は増えていますが、住宅街や道路・教育施設の大部分はまだ再建からはほど遠い状況で、子ども達は長期的支援を必要としています。第3期で助成頂いたバスは、第2期で助成頂いた校舎とともに、臨学舎が長期にわたり大槌町で活動するための重要な基盤となります。これらのご支援をもとに、可能な限り長期にわたって大槌・女川両町でのニーズに応え活動を継続するために最大の努力を続けていきます。
●大槌町は、人口の減少・流出傾向に震災の人的被害が重なっており、地域の存続自体に危機感が生じている状況です。既存の産業や伝統文化が衰退する中で、子どもたち自身が産業を起こし、地域を支えていくためにも、彼らのキャリア形成力、郷土愛、問題解決能力を育むことがますます必要になっています。
●これらの課題の解決に向けて、引き続き、寄付者の皆様の御理解と御支援が必要となりますので、宜しくお願いします。

子どもサポート基金 子どもサポート基金 活動レポート一覧 子どもサポート基金 活動レポート一覧 活動レポート トップページ 子どもサポート基金 活動紹介