2013年07月12日
被災した子ども達への学校外教育バウチャー(クーポン券)提供
東日本大震災で被災した小学生から高校生の児童生徒に対して、塾・予備校・習い事などで利用できる学校外教育バウチャーを提供することで、子どもたちの将来の自立を支え、被災地の復興に寄与する。 ・176名の被災した子どもたちに学校外教育バウチャーを提供し、教育支援をした。同時に専門家からの研修を受けた大学生ボランティアが個別の進路支援を行った。 ・継続利用審査を実施し、92名の被災した子どもたちにバウチャーを継続提供した。
【活動の背景】
背景(1):東日本大震災による深刻な経済被害
東日本大震災では、その甚大な被害により多くの家庭が経済的ダメージを被った。2012年11月時点で、被災を理由とした生活保護受給開始世帯数は、1444世帯と半年間で200件以上増加していることからも、経済被害の大きさがわかる(参考:厚生労働省報道発表2013年1月)。
背景(2):学校外教育機会の喪失は教育格差を生む
・塾や習い事等の学校外教育は、子どもの成長に欠かせない機会である。学習塾を例に挙げると、中学3年生の59.4%が通塾し、週に3回以上通塾する生徒は34.7%に上ることからも、その重要性がわかる(参考:Benesse教育研究開発センター「第1回子ども生活実態基本調査報告書」2005年)。
・学校外教育の機会は家庭の経済状況に左右されるがゆえに、被災による経済的被害によって、多くの子どもが学校外教育の機会を喪失した。また、日本では学校外教育の機会を保障する制度が十分に整っていないため、被災地では教育格差の広がりが懸念される。
【活動の内容】
■活動時期
2012年10月1日~2013年3月31日
■活動場所:
岩手県、宮城県、福島県、栃木県、千葉県、兵庫県
■受益者:
東日本大震災で被災した小学生~高校生 176名
【学年別】
・小学生: 29名(小2 : 6名、小3 : 5名、小4 : 5名、小5 : 9名、小6 : 4名)
・中学生: 50名(中1 : 0名、中2 : 9名、中3 : 41名)
・高校生: 97名(高1 : 58名、高2 : 7名、高3 : 32名)
【地域別】
宮城県: 114名、岩手県: 29名、福島県: 29名、栃木県: 1名、千葉県: 1名、兵庫県: 2名
※栃木、千葉、兵庫の方は被災3県からの県外避難児童・生徒
【被災状況別】
・住家被害(全壊 164名、大規模半壊 6名、半壊 5名、一部破損 1名)
※福島第一原発による被害による被害を含む
・人的被害(父親死亡・行方不明 4名、母親死亡・行方不明 7名、その他家族死亡・行方不明 25名)
・親の失業:(父失業:68名、母失業:45名)
■スケジュール
日 程 |
内 容 |
2012年10月1日 |
前期から引き続き176名の子どもがバウチャーを利用(2013年3月末迄) 前期から引き続き大学生ボランティアと子どもの面談(以後毎月実施) |
2012年10月24・27日 |
大学生ボランティアシェアリング |
2012年11月1日 |
第3回外部専門家による学力テスト及びアンケート調査実施 |
2012年12月23・26日 |
大学生ボランティアシェアリング |
2013年1月25日 |
バウチャー利用継続審査開始 |
2013年2月23・24・27日 |
大学生ボランティアシェアリング |
2013年2月23日・24日 |
大学生ボランティアスキルアップ研修実施 |
2013年3月10日 |
バウチャー継続審査完了(一部書類不備者については3月末まで対応) |
2013年3月20日 |
バウチャー贈呈式開催 |
2013年3月31日 |
バウチャー利用終了(有効期限) |
■学校外教育バウチャー提供プロジェクトの内容
東日本大震災で被災した小学生から高校生に対して、塾、スポーツ、文化活動、習い事などの学校外教育サービスで利用できるバウチャー(クーポン券)を提供した。
【学校外教育バウチャー提供の概要】
・バウチャー利用人数:
176名
・バウチャー利用期間:
2011年12月1日~2013年3月31日(一部の生徒は2012年5月~利用開始)
・バウチャー提供額:
一人当たり25万円 ※バウチャー提供額は、文部科学省「平成22年度子どもの学習費調査」から算出。
・バウチャー利用先:
・教科学習:塾・予備校・家庭教師・通信教育など
・体験活動:キャンプ・野外活動・社会体験など
・スポーツ:サッカー教室・スイミングスクール・スポーツクラブなど
・文化活動:ピアノ教室・音楽教室・絵画教室など
・習い事 :習字・そろばん・パソコン教室・外国語教室など
※バウチャー取扱事業者(2013 年 3 月 31 日 時点) 全 1381 教室・事業所
○バウチャーの継続利用審査
2013年度以降のバウチャー継続利用審査を実施し、92名のバウチャー利用者が次年度以降も継続してバウチャーを利用することが決定した。
・継続利用決定者:
92名(審査対象者144名)
・審査期間:
2012年1月25日~2013年3月31日
・審査基準:
①世帯収入・所得状況
②過去のバウチャー利用状況
○バウチャー贈呈式の開催
バウチャーの継続利用が決定した利用者を対象に、バウチャー贈呈式を開催した。当日はバウチャーの目録を贈呈するとともに、スピーチやパルディスカッションを通して子どもたちが今後の抱負を語った。
・日時:
2013年3月20日(水)14:00~15:30(終了後、参加者全体で懇親会)
・会場:
仙台市シルバーセンター 第一研修室
・プログラム:
バウチャー目録贈呈、バウチャー利用者代表スピーチ、バウチャー利用者パネルディスカッション等
・参加者:
バウチャー利用者 19名
バウチャー利用者の保護者 30名
寄付者・協力者 31名
当法人ボランティア・職員 15名
○大学生ボランティアによる進路支援
バウチャーを利用している子どもに対して、専門家からの研修を受けた大学生ボランティアが毎月1回、面談や電話を通して進路・学習の相談やバウチャーの利用方法に関するアドバイスをした。
・実施時期:
2012年10月1日~2013年3月31日
・面談頻度:
毎月1回(面談日程は個別調整)
・従事した大学生ボランティア人数:
63名
○大学生ボランティアシェアリングの開催
大学生ボランティアは、2ヶ月に1度、子どもたちとの関わりについて専門家や仲間のボランティアと共有し、専門家から個別のケースに対して助言を受けた。
・実施日時・会場:
<第一回大学生ボランティアシェアリング>
①10月24日(水)18時~20時 ②10月27日(土)10時~12時 ③10月27日(土)13時~15時
会場:仙台貸会議室ギャラリー一番町
<第二回大学生ボランティアシェアリング>
①12月23日(日)10時~12時、②12月23日(日)13時~15時、③12月26日(水)18時~20時
会場:仙台市中央市民センター
<第三回大学生ボランティアシェアリング>
①2月23日(土)10時~18時 ②2月24日(日)10時~18時 ③2月27日(水)18時~20時
会場:荘銀ビル 5階 会議室
・講師(専門家):
阿部裕二(東北福祉大学 総合福祉学部 社会福祉学科教授)
佐藤利憲(仙台青葉学院短期大学 精神看護学助教授)
高橋聡美(つくば国際大学 医療保健学部 看護学科 精神看護学 教授)
出村和子(一般社団法人日本いのちの電話連盟 理事)
松浦智博(株式会社デュナミス取締役/キャリア教育コーディネーター)
松本幸子(社会福祉士/宮城県中央児童相談所元職員)
○大学生ボランティアスキルアップ研修
専門講師(出村和子先生 日本いのちの電話連盟理事)を招き、1年の活動を振り返るとともに、電話でのコミュニケーションをテーマとしたワークショップを実施し、大学生のコミュニケーションスキル向上に努めた。
・日時:
①2月23日(土)10時~15時50分 ②2月24日(日)10時~15時50分
・参加者:
大学生ボランティア 37名(①17名、②20名)
・講師:
出村和子(一般社団法人日本いのちの電話連盟 理事)
○外部専門家による事業評価の実施(中間調査を実施)
学校外教育バウチャーの提供は日本国内で初めて行う事業であるため、外部の専門家による事業評価を実施した。子どもたちへのが学力テスト、心理アンケートを継続的に実施し、外部専門家による分析結果を2013年秋ころに発表する予定である。
・実施時期:
2012年11月~2013年3月
・スケジュール:
日 程 |
内 容 |
2012年11月 |
第1回調査(学力テスト、保護者・子どもアンケート実施) |
2012年4月 |
第2回調査(学力テスト、保護者・子どもアンケート実施) |
2012年10月 |
中間調査結果分析 |
2012年11月 |
第3回(最終)調査(学力テスト、保護者・子どもアンケート実施) |
2012年1月 |
最終調査用紙回収締切 |
2013年2月~ 2013年8月頃 |
専門家チームによる結果分析 |
2013年9月頃 |
調査結果公表・論文発表 |
・調査方法:
バウチャー利用者とバウチャー非利用者(落選者)の中高生に対して、継続的に学力テスト・子どもアンケート・保護者アンケートを実施し、学力及び心理面(自己肯定感等)の変化を測定する(比較調査)。
・外部専門家:
赤林 英夫(慶應義塾大学 経済学部 教授 教育の経済学専攻)
田中 隆一(政策研究大学院大学 准教授)
中室 牧子(東北大学大学院 文学部 助教)
荒木 宏子(慶應義塾大学 経済学部 博士課程)
○活動の成果
・バウチャーを利用して希望の教育サービスを受けたこと、また大学生ボランティアからの進路支援を受けたことによってする子どものうち、中学3年生、高校3年生のうち 91.7%が希望する進路に進む等の成果が見られた。
※学力及び心理面の成果については、現在外部調査チームによる分析途中であるため本報告書には記載できませんが、分析が完了し次第、報告いたします。
<中学3年生(41名)の進路実績>
・支援対象者の100%が進学
内 容 |
人 数 |
比 率 |
進 学 |
41 |
100.0% |
計 |
41 |
100.0% |
・支援対象者の100%が希望する進学先に進学
内 容 |
人 数 |
比 率 |
強く希望していた |
27 |
65.9% |
まあまあ希望していた |
14 |
34.1% |
あまり希望していなかった |
0 |
0% |
全く希望していなかった |
0 |
0% |
計 |
41 |
100% |
<高校3年生(32名)の進路実績>
・支援対象者の81.3%が進学
内 容 |
人 数 |
比 率 |
進 学 |
26 |
81.3% |
就 職 |
1 |
3.1% |
浪 人 |
3 |
9.4% |
その他 |
2 |
6.2% |
計 |
32 |
100% |
・支援対象者の78.1%が希望する進学先に進学
内容 |
人 数 |
比 率 |
強く希望していた |
12 |
37.5% |
まあまあ希望していた |
13 |
40.6.% |
あまり希望していなかった |
1 |
3.1% |
全く希望していなかった |
0 |
0% |
浪人 |
3 |
9.4 |
その他 |
3 |
6.2 |
計 |
32 |
100% |
○バウチャー利用者の声
『バウチャーを利用して勉強することが楽しくなった』
バウチャーを利用していなかった頃の僕は勉強に対するやる気があまりなく、将来の事も何も考えていませんでした。しかし、バウチャーを利用させていただいてからは自分でもびっくりするほど勉強に対して集中して取り組むようになり、今では勉強することが楽しく感じられるようになりました。私には夢があります。1つ目は”心理学者になること”、2つ目は”被災地の復興の力になること”です。この夢を叶えるために僕自身が頑張らなければいけないと思います。僕自身のためだけではなく、被災地のためにも僕はクーポンを使わせていただきたいです。最後に多大なるご支援ありがとうございました。(宮城県気仙沼市 中学3年生男子)
『大好きな南相馬市のために役に立てるようにしていきたい』
2年後の大学受験に向けて志望する学校に今からでもできる学力をつけるために使っていきたいです。私は将来、新聞記者か看護師になりたいので、どちらにも行けるような基礎基本を身につけて応用できるようにしていきたいです。クーポンを最大限有効活用して、自分のすんでいる好きな南相馬市のために役に立てるように将来に向けて頑張っていきたいです。そして、自分がしっかり自立して、ちゃんとした大人になれたとき、今後の南相馬をみすえながらも、お母さんにじっくりしっかり恩返しをできる立派な大人になりたいと思います。(福島県南相馬市 高校1年生女子)
『バウチャーのおかげでピアノを続けることができた』
私は、去年の11月からクーポンを使って塾に通い始めました。その塾の教え方がわかりやすいため、苦手だったところを理解することができ自信になりました。高校に入学したら、勉強がさらに難しくなると思うので、またクーポンを使って塾に通いたいです。また、私は4歳からピアノを習っていて、震災後もクーポンを使いながら続けることができました。文化祭では、ピアノ教室へ通う回数を増やし難しい譜面を弾けることができました。一生涯の趣味にしたいので、技術を向上させていきたいと思います。仮設住宅は狭くストレスがたまることもあります。ピアノを弾くと気分転換ができて気持ちが和らぎます。これからもピアノを続けていければ嬉しいです。(岩手県陸前高田市 中学3年生男子)
○成果物(予定)
・2012年度年次報告書(2013年6月頃完成予定)
・外部評価報告書又は研究論文(2013年秋頃公表予定)
【寄附者へのメッセージ】
この度は、ご支援いただき本当にありがとうございました。皆様のご支援のおかげで、176名の子どもたちが学習、文化活動、スポーツ等、様々な教育の機会を得ることができました。特に今期は中学3年生、高校3年生が受験を迎えましたが、バウチャーを利用して、多くの子どもたちが自分の夢や目標に一歩近づくことができました。また、2013年3月31日でバウチャーの有効期限を迎えるにあたり、今回初めて被災した子どもたちにバウチャーを継続提供しました。震災から2年が経過しましたが、子どもたちの教育支援は「継続」することによって、はじめて価値が生まれると信じています。これからも長いスパンで子どもたちを支えていきたいと思います。どうか、今後もご一緒に被災地の復興を担う子どもたちを支えてください。よろしくお願いします。
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