2013年12月11日
岩手県陸前高田市気仙町、広田町、矢作町、小友町における、子どもの居場所づくり活動、『みちくさルーム』の実施
震災により多くの遊び場、家族、生活環境を失った子どもたちに対し、子どもたちがのびのび過ごすことにより震災によるストレスを発散・軽減させることを目的に、気軽に集えるコミュニティスペース「みちくさルーム」を、学生ボランティアと協力して実施し、遊びや学習のサポートを行った。 地区別による実施回数 1.気仙地区:のべ20回 2.広田地区:のべ26回 3.矢作地区:のべ9回 4.小友地区:のべ11回
震災後、陸前高田市内における子どもの遊び、表現、学びの場は激減し、震災から2年が経過した現在でも、小学校のグラウンドには仮設住宅が立ち並び、子どもが気軽に集い、安全かつ自由に過ごせる公園や児童館などの復旧・建設のめどは立っていない。
加えて、被災体験によるストレスのみならず、震災後の家庭、教育環境の変化による心的負荷を抱えた子どもたちの心身のケアには、長期・継続的な取り組みが必要とされている。
特に、『みちくさルーム』の活動地域では、グラウンドや公園など、運動したり遊んだりできる場所が少ない上に、震災前・震災後に関わらず、学童クラブなど、学校外で活動する子どもの見守り機能がないか、ある場合でも、定員などの関係で、子どもの集まることのできる場所が限られている現状がある。
スポーツ少年団などの地域の活動も時間の経過と共に復旧しつつあり、活動も活発化しているが、そのような活動に参加しない女児や、低学年の児童については、学校の外で集まる場所が圧倒的に少ない状況にある。
地域の保護者たちが主体となって行う、子ども会などの地域行事も、震災から2年以上が経過する中で少しずつ再開しているものの、保護者も震災後、仕事や家庭など様々な要因で忙殺され、震災の影響による保護者自身の心身の疲労も見られることから、子どものための地域活動に積極的に関わることは難しいというのが現状であり、地元主体の活動を補完する形でのサポートが必要とされている。
そのためP@CTでは、貴財団第3期の事業に引き続き、今期も継続して子どもの居場所づくり、『みちくさルーム』の実施を行った。
また、震災後、時間の経過とともに、被災地で子ども支援活動を行う団体の数は減少傾向にあるものの、上述のように、子どもの居場所づくりのニーズは依然として高いため、地元からの要望および他団体からの活動引き継ぎにより実施箇所が3カ所から、4カ所に増えた。
子どもの憩いの場『みちくさルーム」は、2011年10月より開始し、2013年9月現在、陸前高田市内4地区で定期的に活動を実施している。実施日程は地区により異なるが、毎月隔週土日、月に4日間の活動をベースとし、午後2〜4時の2時間を活動時間としている(小友町のみ引き継ぎ前の活動時間を踏襲し午前10時から12時の2時間で実施)。
実施にあたっては、活動に参加する学生ボランティアと連携して、遊びや学習のサポートを行った。地域の公民館などのパブリックスペースをお借りし、その中で大人が見守りながら子どもたちがのびのびと遊び・学べるようにしており、遊びの内容はボランティアによる企画をメインとして活動を行った。
企画の際は、スタッフが監督、ファシリテーションを行い、学生の主体的な取り組みをサポートした。企画内容については、難易度を調整し、どの学年の子どもでも参加しやすい活動になるように留意した。
実施内容は、鬼ごっこや「だるまさんがころんだ」などの日常的な遊びや、七夕にちなんだ工作など季節に応じた催しに加え、企業の社員ボランティアと恊働で行った、工作ワークショップなど、多岐に渡る。企業と恊働実施した工作ワークショップでは、作品制作の工程や仕上げ方法などに企業の特色や専門性が表れ、子どもたちにものづくりの面白さを伝える機会となった。また、地元・陸前高田の自然への理解を深める企画として、地元の海に生息する磯ガニを観察し、カニ釣りゲームやカニレースなどの遊びを通じて、震災後触れる機会の少なくなった海の生き物との触れ合いを目的にしたワークショップなどの取り組みも行った。
普段の活動では、ボール遊びや鬼ごっこ、大縄跳びなどの遊びを積極的に取り入れ、震災後、遊び場が限られ、思い切り運動する機会の少ない子どもたちが楽しく運動できるように心がけた。
活動実施にあたっては、活動に参加する学生ボランティアと事前打合せを実施し、陸前高田をボランティアで訪れる学生たちに、現地の概況や、子どもを取り巻く環境に関するオリエンテーションや、活動実施時の安全管理に関する注意喚起を行った。また、毎回の活動終了後に、活動に関する振り返りを行い、学生からの感想や、活動に対する評価の共有や、よりよい活動実施のための話し合いの場を設けた。
また、小学校の夏休み期間には、活動地域で震災前から行われていた子ども活動のサポートとして、矢作町での流しそうめんの行事を、学生ボランティアと協力し、地域の方々と恊働実施した。広田町、小友町においては、震災後から他団体が継続して実施していた長期休暇期間の子ども向けの遊びと学習支援のプログラムを引き継ぎ、『みちくさルーム』の特別プログラムとして実施した。
その他、震災直後の2011年より継続して活動を実施している気仙地区、広田地区においては、参加児童の保護者を招き、『みちくさルーム』の活動に関する保護者説明会を実施し、それぞれ2名、5名の保護者にご参加いただき、『みちくさルーム』に関し、スタッフの紹介や活動内容の報告、安全管理に関する説明をし、保護者より、活動に対する意見やアドバイスをいただいた。活動地域ごとに、参加児童の保護者に向けたニュースレター、『みちくさだより』を毎月発行し、『みちくさルーム』の活動報告や翌月の活動日程の告知を行った他、団体ホームページでも活動報告記事を掲載し、広報活動を行った。
『みちくさルーム』参加者のある女の子より、スタッフやボランティアにあてた『みちくさルームのみなさんへ』という手紙の中には、下記のようなメッセージがあった。
「わたしは、『みちくさルーム』でべん強したり、遊んだりするのが大好きです。わたしは、みなさんとふれあうことが大好きです。わたしにとって、みちくさルームですごす時間は大切なものです。」(原文ママ)
小学3年生の彼女が、『大切』『ふれあい』という言葉でみちくさルームを表現し、伝えてくれた。震災により、多くの遊び場や大切なものを失い、制限された生活環境で過ごしているなかで、子どもたちは「人とのふれあい」を求めていた。
『みちくさルーム』では、子どもたちと学生ボランティアが、「またね」という気持ちで繋がり、『みちくさルーム』は、子どもたちにとって定期的に訪れる楽しみとして定着している。
また、学生自身も被災地域出身者であることも多く、「震災当時は高校生で、大学生のボランティアに勉強を教えてもらった。恩返しがしたい」「将来は地元に戻って教員になりたい」という学生もおり、彼ら自身の学び•成長になっているケースもある。
また、活動に参加した学生ボランティアからは、活動後の振り返りの中で、「『みちくさルーム』に参加して、被災地の子どもたちが、自分が思っていた以上に元気なことに驚いたが、活動が終わった後に、仮設住宅に戻っていく後ろ姿が何となく寂しげだった。子どもたちがずっと元気でいられるように、『みちくさルーム』を継続して実施していくことが大事だと思う。」という意見や、「子どもが自分の家族の話や個人的な話をしてくれた。聞くことしかできなかったが、話をすることで、少しでも(子どもの)気が楽になったのかな、と思う」という声が聞かれた。
参加する子ども保護者からは、「子どもたちと楽しい思い出を作ってくれて、どうもありがとうございます」、「(保護者が)忙しく、子どもを遊びに連れていくことができないので、安心して預けられる場所があるのは助かる。子どもにとっても、『(ボランティアやスタッフに)また会える、定期的な楽しみがある』ということが心の支えになっているのではないかと思う」などのお声をいただいた。このことから、保護者も、『みちくさルーム』の活動を高く評価してくださり、温かな目で見てくださっていることを実感した。
また、気仙町・広田町で開催した保護者説明会の際には、ご参加いただいた保護者の方より、「うちは経済的に苦しく、お金を払って子どもを預けることはできないので、『みちくさルーム』のように、無料で子どもを預けられる場所があるのはありがたい」という声や、「子どもも、毎回参加することを楽しみにしている」という声を聞くことができた。
『みちくさルーム』が、多くの方々の協力のもと「人と人とのつながり」で成り立ち、子ども•学生双方の心を育み、長期的に被災地の子どもたちを支える一助になると感じている。
みなさまの温かなご支援のおかげで、引き続き、子どもの居場所づくりの活動、『みちくさルーム』を実施することができました。活動を継続する中で、子どもたちの様子にも様々な変化が見られ、今後も長期に渡り継続的に子どもたちを見守ることが求められていると日々実感しております。今後とも、被災地にご関心をお寄せいただき、ご支援を賜われますよう、担当スタッフ一同、心よりお願い申し上げます。
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