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子どもサポート基金助成団体レポート

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いいたてまでいの会

飯舘村の子どもたちのための世代間交流による「共育」推進支援活動
2013年度の「ふるさと学習」の継続事業。仮設住宅のお年寄り達と専門家を講師に、中学生が「郷土料理」「民話」「伝統芸能」を実践しながら学ぶことで、長引く避難生活で困難になっている世代間交流の促進と、失われつつある伝統文化の灯を未来に繋ぐための子どもたちの活動を支援する事業。

基本情報

活動期間 2014年4月~2015年3月
活動地域 福島県飯館村  
支援人数 200名
活動人数 スタッフ7名、ボランティア25名
連携団体 飯舘村教育委員会 教育課
飯舘村立飯舘中学校
飯舘村飯樋文芸復興会

写真

  • 1年生 田植え踊りの練習風景
  • 2年生 文化祭での発表
  • 3年生 仮設住宅訪問時の調理風景
  • 飯舘幼稚園での絵本読み語り会

活動の背景/内容

活動の内容

三世代同居が当たり前のような長閑で平穏な暮らしから、東日本大震災後、高齢者と子や孫の世代がバラバラに引き裂かれた暮らしに一転した。除染も遅々として進まず、明確な帰村の目途もたたない現状ではあるが、疲弊する大人達とは対照的に、飯舘村の子どもたちからは「将来は飯舘村のために」という気概と希望が伝わってくるようになった。

そんななかでの中学校の子どもたちと仮設住宅のお年寄りをつなぐ「ふるさと学習」では、子どもたちと交流する機会を持ったお年寄り達に多くの笑顔が戻り、子どもたちには尊敬や慈しみの心が生まれ、お年寄りとの接し方にも目を見張るほどの成長が見られるようになった。そして何より、ふるさとの歴史や伝統文化を深く知りそれを体現することで、村を受け継いでいくという自覚が芽生えて来ているのを実感した。しかし、中学校と仮設住宅との交流を提案して3年目に入ろうとしていたが、今後の課題として未だ訪問交流をしていない仮設住宅が数多くあった。また、こうした伝統文化は継承できてこそ意味のあるものであり、ここまでようやくつないできたものを断ち切ることは、飯舘村のアイデンティティそのものが消え去ってしまうことでもある。そしてまだ現在の飯舘村は、その子どもたちの活動を自力で行なっていくには困難な状況であった。

子どもたちのこれらの活動を一人でも多くの村民の方々に知ってもらい、交流の場が広がるようなサポート体制を作っていき、子どもたちの希望の灯を消すことなく、結集してさらに大きな再生の灯となるためのこころのベースを築いていくべく、今回の事業を行っていくこととした。

2013年度に「ふるさと学習」を体験した生徒達はそれぞれ2,3年生に進級し、新たな伝統文化に取り組むことでさらに豊かな情操を育み、新1年生は伝統芸能の練習のみに留まらず、使用する用具を自分達で作り、着物の着付けなども出来るようにするための充実したサポート体制作りを目標とした。

活動の内容
○ふるさと学習「いいたて・までいな学びプロジェクト2014」
飯舘中学校、仮設住宅、伝統芸能保存会等と連携し、飯舘村の子どもたちが村の伝統文化を継承しながら、やがて未来の飯舘村を担っていく「こころの土台づくり」のための支援活動。
 
◆1年生:伝統芸能「田植え踊り」(毎週木曜日午後)
講師;懸田弘訓(県文化財保護審議会委員・二本松市在住)、伝統芸能演舞者他(伝統芸能保存会)
1年生は継承が困難になっている飯樋地区の伝統芸能・田植え踊りを行った。最初の授業では、伝統芸能の起源などの歴史を学んだ。この授業では伝統芸能についてだけでなく、自分達の祖先がどんな暮らしをしていたのか知ることができた。また、昨年のふるさと学習で田植え踊りを学んだ2年生が、1年生に踊りを教える機会もつくったことで、学年の垣根を越えた授業になった。田植え踊りの練習では、実際に田植え踊りに参加していた方を講師に迎え練習を行うことで、村の人との交流にもつながった。
練習の成果を仮設住宅で披露、中学校の文化祭では正装して披露した。村の文化祭でも発表。着付けの練習も行った。12月には福島県福島市飯野町にある古民家で、昔ながらの田植え踊りを再現する活動を行なう。
 
◆2年生:飯舘の昔話「いいたてまでいな紙芝居」
講師;飯野和好(絵本作家・鎌倉市在住)、菅野テツ子(語り部・飯舘村民)
村の語り部だったおばあさんから、村で語り継がれてきた民話を聞き取り、それを文字起こしして紙芝居にした。紙芝居の制作の部分では絵本作家の飯野和好さんに指導いただき、民話をどうやって紙芝居として表現をすればいいのかを学習した。また、紙芝居は制作だけでなく、発表も行うため、場面ごとに担当を決め、紙芝居を読む練習なども行った。仮設住宅、文化祭で発表を行なった。
 
◆3年生:郷土料理「飯舘の味噌づくり」
講師:中山晴奈(フードアーティスト・東京在住)、仮設住宅等の皆さん(飯舘村民)
今年度は「味噌」をテーマに絞って学習を行なった。
初回に味噌づくりをして、半年後の文化祭では出来上がった味噌を使って料理をつくり、父兄や仮設住宅のお年寄りの方々に振舞った。調理方法を学ぶだけでなく、講師のお母さん達からちょっとした調理の際の技や、村の季節や旬の素材の話などのヒアリングも積極的に行なった。仮設住宅訪問時には、飯舘村の昔懐かしい料理をつくって持っていき、各戸に配りながら村の歴史や昔の暮らしなどの聞き取りを行い、その後自分達でオリジナルの味噌料理レシピを作成。文化祭でレシピを発表し、一番おいしそうな料理にお客さんに投票をしてもらった。投票で1位になったレシピは、給食のメニューになった。
 
3学年とも、前年度の経験があったため、反省点は生かすことができたし、何より、子どもたちが後輩に去年自分が体験した学習を教えることができるということで、学年間の交流にもつなげることができた。
毎週木曜の総合学習の時間や、仮設訪問の日と組み合わせたりなどして、定期的に授業として行うことができた。地元の方を講師に迎えるほか、各テーマごとに有識者も講師として迎え、一味違った厚みのある授業を展開することができた。
 
○その他の事業:飯舘村の幼稚園での絵本読み語り
講師:飯野和好(絵本作家・鎌倉市在住)
飯野町にある飯舘村の仮設の幼稚園で、およそ50名の幼稚園の子どもたちを対象にした絵本の読み語りを開催した。
活動の成果
「ふるさと学習」では飯舘中学校の生徒たちを対象に行った。中学校にも協力いただき、毎週木曜日に授業としてこの活動を実施した。
1年生の仮設住宅訪問の際には、まだ練習途中の田植え踊りを仮設住宅で暮らすお年寄りに見ていただいた。子供たちの田植え踊りは、今では仮設住宅のお年よりの楽しみにもなっていて、発表が始まる前からみなさん、外に出て子どもたちを待ってくれていた。
2年生は民話を紙芝居に描くため、当時のことを調べることで、昔の人々の暮らしを知ることができた。人前でマイクを使わずに大きな声を出す、ということに慣れていない子供たちだったが、練習していくうちに上達していった。子供たちの描いた紙芝居は毎年村が主催している「いいたて村文化祭」へ紙芝居を展示し、多くの村民に見てもらうことができた。また、出来上がった紙芝居は11月下旬に控えている仮設住宅訪問の際、お年寄りたちに子供たち自ら発表を行う。
3年生の授業は、ふだん仮設住宅に住んでいる講師のお母さん達にとっても、子供たちと一緒になって料理をすることはとても励みになっている。今年は、調理だけでなく、ヒアリングにも力を入れて活動を行なったこともあり、子どもたちは仮設住宅を訪ねるたびに一軒一軒まわって、お年寄りから飯舘村の食について、いろいろなお話を聞くことができた。孫が遊びに来てくれたようで嬉しい、という声をたくさん聞くことができた。子どもたちがつくった料理は、毎回近くの仮設住宅へ子供たち自ら配っており、なかなか話かけにくいお年寄りへも、声をかけるきっかけとなったりしている。
これらの活動により、ふるさとの文化の素晴らしさを見直すきっかけとなっただけでなく、世代間交流にもつながった。子供たちにとっても、「誰かのために」とか「誰かをもてなすための」という意識が芽生えていることを感じた。すべての活動は中学校の文化祭での発表だけでなく、今後の仮設住宅訪問の際にも発表をしていく予定だ。
幼稚園で行なった絵本読み語りでは、飯野和好さんの味わいのある不思議な語りに子どもたちは前のめりになってお話を聞いていた。子どもたちが体全体で大笑いしている姿はとても印象的だった。子どもたちだけでなく、大人も楽しめたイベントとなった。

この度は子どもサポート基金を通じ、いいたてまでいの会の活動をご支援いただき厚く御礼申し上げます。

震災からこれだけの時間が経ちましたが、現場では復興の兆しはまだ見えておりません。私たちにとって、将来の福島・飯舘村を担う子ども達は希望の光そのものです。私たちは子ども達が離れている故郷を身近に感じながらより豊かな情操を育むことで、やがて自らの力で未来の福島をつくっていくためのベースが築かれることを目標に、子供たちに支援を続けていきたいと思っています。

この活動も今年で二年目となりました。こうして実現出来たのも本当にたくさんの方のご理解とご支援のおかげです。今後も皆さまにいただいた志を最大限に活かし、一日でも早い復興へ向けて邁進して参ります。誠にありがとうございました。

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