2015年01月15日
登米市中田町地区の小学校、地域住民等との協働による、子どもたちの学習支援、暮らし支援、環境改善の復興支援活動
震災後の地域力が重要視される中、高齢化と少子化が極端に進んだ中田町地区(特に石森地区)を対象に、水資源の重要性をテーマに、教育現場、地域住民、行政、企業等と協働して、子どもたちの学力向上を支え、農村地域の暮らしの知恵を学び、水辺の環境改善活動に取り組むことで、力強いコミュニティづくりにつなげ、震災の影響を乗り越え、地域ぐるみで次世代の人材を育成するために活動します。
【地域の状況】
今回の活動地である宮城県登米市中田町石森地区の中央部にある石森小学校学区は、古くは石森城下の歴史ある地域であり、かつて昭和50年代までは同地方の中心商業集積地として100軒ほどの個人商店が軒を連ねており、近郷近在から人が集まる中心地でした。
しかしながら、社会環境の変遷により現在では人口減少、高齢化が非常に進んだ地域となっています。
また、一方で地域活動中に自然環境悪化に対する話が高齢の住民から出され、40年前は蛍が飛び交うほど豊かな生態系が営まれていたものが、今では子どもたちが虫取りをする場所すら少なくなっていて、田んぼにはイナゴが見当たらない環境になっていると嘆く声が出されました。
そのような課題が出されていても、取りまとめをするような人材や仕組みが出来ていないコミュニティの脆弱性が浮き彫りになっています。
さらに、このような既存の課題に加え、東日本大震災により明らかになった被災地特有の地域で暮らす子供たちは、それでも懸命に石巻などの津波被災地域の子どもたちに勇気を与えたいと、石ノ森漫画館への支援をおこなったりしてはいますが、私たちが自然観察などの活動を通じて感じることは、子どもたちが萎縮していたり消極的な姿も見受けられることから、少しでものびのびと育ち、多様な地域の人たちとの付き合いの中で、積極性を培い、リーダーシップのとれる子どもたちへと成長できることを支えることが出来たらと思い、これまで学校や地域の方々とも話し合ってきました。
【課題】
私たちは、東日本大震災を経験した者として、被災者である地域住民が自らの抱える課題と向き合うことが、復興への第1歩と捉えており、これまで地域内で話し合ってきた中から課題を整理すると次のようになりました。
1.震災により明らかになった地域力の脆弱性を食い止めるための取り組み。
2.自分たちの地域環境を住み良い地域とするための実践活動。
3.地域住民や子どもたちが親しく交流できる場づくり。
4.少なくなっても元気に笑い、運動や学習をする子どもたちの元気な姿を一緒に見たい。
5.1年を通じた子どもたちへの学習支援と暮らし支援の実践
6.学校、地域、行政、企業とNPOが一体となった運営体制づくり
7.継続的活動とするための財源確保の研究
8.地域課題の新たな解決方法や仕組みの検討
4月、5月、6月
活動を実施するための基盤づくりを行いました。具体的には、詳細な企画立案、鉄イオンに関する環境再生作用についての専門家であり、「鉄炭缶詰」の考案者である杉本幹生氏への講師依頼と理論の理解、宮城教育大学環境教育実践研究センター村松隆教授への、水質調査に関する計測データの妥当性ついての確認を行いました。また、活動にご理解いただいた地元企業から原材料の提供を頂きました。
また、世界やアジアの国の水環境と、そこに住む子供たちの生活環境を伝えるための講話を松井聡子氏に依頼しました。アジアの子供たちの生活と比較しながら、自分たちには何ができるかをテーマにした、約1時間の講話の進め方や運営方法について検討、協議を行いました。
6月16日(月)9時55分~10時40分 総参加人数28人
石森小学校4年生25名に対し、松井聡子氏による講話を実施しました。
テーマ「水を知る ~アジアの子供の生活から~」
6月22日(日)8時~11時 総参加人数 6人
お濠の水環境改善活動の前段階として、地域住民の方々との協働により、お濠周辺の草刈りを実施しました。
6月23日(月)9時5分~10時40分 総参加人数 33人
杉本幹生氏を招いて、授業のなかで「鉄炭缶詰」の作り方ワークショップを石森小学校4年生に対して、ボランティアスタッフの協力を得て実施しました。
6月23日(月)13時~17時 総参加人数 8人
登米市市民生活部環境課や関係団体を交えて、杉本氏による講演会(講演時間2時間)を実施しました。 テーマは、「なぜ今、鉄イオンFe2+が必要なのか!」
その後、近隣湖沼の視察を行いました。
7月7日(月)9時5分~10時40分 総参加人数 32人
松井聡子氏を招いて補足説明を頂きながら、「鉄炭缶詰」をお濠に投入しました。
(今後も継続して、3~4か月に一度、缶詰の入れ替えを行い、引き揚げた缶詰の中身はさらに花壇の肥料としての再利用に取り組みます。)
9月9日(木)9時15分~11時5分 総参加人数 63人
上沼小学校5年生30名・6年生28名に対し、松井聡子氏による講話を実施しました。
テーマ「水を知る ~アジアの子供の生活から~」
9月11日(木)13時30分~14時40分 総参加人数 18人
浅水小学校4年生15名に対し、松井聡子氏による講話を実施しました。
テーマ「水を知る ~アジアの子供の生活から~」
9月12日(金)10時35分~11時35分 総参加人数 39人
宝江小学校3年生13名・4年生22名に対し、松井聡子氏による講話を実施しました。
テーマ「水を知る ~アジアの子供の生活から~」
7月、8月、9月
お濠の地勢、測量、水質、流況等の基本調査については、今回の取り組みの基礎資料とし、今後の活動での活用を図るため、正確かつ精密な基本データを専門業者に調査委託いたしました。また、検査方法については学びながら、定期的にお濠の検査を実施しました。定期検査は7月29日(火)9時30分~17時、8月26日(火)13時30分~17時、9月24日(水)13時30分~17時に、それぞれ行いました。
【定量的な成果】
地域、学校との連携開催 8回 参加者 のべ227人(大人44人、児童183人)
【活動に対する支援対象者(受援者)からの声など】
1.鉄炭缶詰
①環境改善活動としての取り組み
専門家(杉本幹生氏)の考案した、根拠に基づいた仕組みである「鉄炭缶詰」を、環境改善活動として取り入れました。
②児童が身近な水環境活動に取り組んだこと
「鉄炭缶詰」を使って、石森小学校4年生の児童が身近な水環境である「お濠」に対して、専門家から直に手ほどきを受けながら、活動に取り組みました。
③リサイクルの手法を同時に学んだこと
これまで捨てていた身近なもの(空き缶と使用済みカイロ)を原料として、「鉄炭缶詰」を作るというリサイクルの手法を環境改善活動と同時に学びました。実際に、児童の家にあった空き缶や使用済みカイロを学校に持ち寄り、原料として使用したことは、子どもたちがリサイクルの仕組みを目の当たりにした点において、効果がありました。
※これらの取り組みは、学校の教員の評価も高く、こどもたちも興味を示し、自然環境を考える良い取り組みになっているという評価をいただいています。
④継続的効果
この「鉄炭缶詰」は、3~4か月毎に入れ替えが必要なため、子どもたちには計画づくりなど、継続するための取り組みが生まれました。
⑤新たな効果
石森小学校、地域住民、行政との協働、地元企業の賛同と、得意分野を持った複数の団体が一つの活動を支えあうという形式をプロデュースすることができました。このことは、これまでに無い課題解決策として、学校や地域住民からも評価を頂いているところです。
2.環境基本調査
本活動を継続するために必要な、当該地の基礎データを得ることができました。
このデータは、これまで地域でも調査する機会が無かったもので、本事業の大きな成果として今後の活用に期待ができます。本会では、定期検査項目については、その採取方法も学習し、取得することができました。
3.水環境学習のための「講話」
松井聡子氏に依頼した、水環境学習のための「講話」については、計画時より対象範囲を広げて取り組み、計4小学校で実施しました。松井氏が直接、東南アジアで活動された内容を、現物や実例を挙げて講話された内容は、子どもたちの育ちに大きな影響を与えることになりました。そのことは、子どもたちから寄せられた感想文やお手紙の中で、アジアの現状や話に対する感謝だけではなく、講師のような仕事をしたいとまで言わせる内容になるなど、その効果はとても大きなものがありました。
全体的に事前準備もていねいに行ったため、学校の担当教員がとても積極的に関わりを持ってくれたので、準備や運営もスムーズにできました。
この度は、多額のご支援を頂きまして、誠にありがとうございました。当会はこれまでも「お濠」を題材に環境教育を実施しておりました。しかしながら、なかなかスタートが切れなかった企画や活動があり困っておりましたが、この度のご支援により、それが一度に進むこととなり、願いが叶うこととなりました。本当にありがとうございました。今後もご期待に添うよう、活動を行ってまいります。
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