子どもサポート基金 子どもサポート基金特定非営利活動法人パクト

2015年01月15日

勉強風景(2014年5月31日小友町).JPG

陸前高田市内における子どもの居場所づくり活動『みちくさルーム』の実施

市内4地区(広田町、気仙町、矢作町、小友町)における、小学生を対象とした「遊び場」「居場所」づくりの活動。大学生のボランティア協力のもと、遊びや人との交流を通じて、震災の影響による心身のストレスを軽減することを目的とする。

基本情報

活動期間
2014年4月~2014年9月
活動地域
岩手県陸前高田市
支援人数
のべ619名
活動人数
常勤スタッフ3名、非常勤スタッフ2名、ボランティアのべ334名
連携団体
  • 聖心女子大学、神奈川大学、上智大学、岩手大学、東北大学、日本赤十字北海道看護大学
  • TTT(Through The Tunnel)

写真

  • スライム作り2(2014年7月5日気仙町).jpg
    スライム作りの様子
  • ペン立て作り1(2014年9月27日気仙町).JPG
    ペン立て作りの様子
  • 仮設住宅と小学校の間の中庭でポートボール遊び(2014年9月28日広田町).JPG
    仮設住宅と小学校の間の中庭でポートボール遊び
  • 大学生とお勉強(2014年5月31日小友町).JPG
    大学生とお勉強

活動の背景・内容

活動の背景

岩手県陸前高田市の子どもたちは、震災により、家族や家、多くの遊び場を失いました。震災から3年以上経った現在も、学校の校庭には仮設住宅が建ったままで立ち退く見通しがたたず、昼休みや放課後、休日に使うことができません。市内に分散した仮設住宅に住んでいる子どもも多く、登下校も徒歩からスクールバスになるなど、限られた時間枠で生活しており、思い切り遊んだり、学校外で友達や人とふれあうことが少なくなり、運動不足やさまざまな体験の機会が奪われています。

道路には復興工事車両が行き交い、浸水区域や危険な場所が多く、多くの保護者も子どもだけで外出することを心配しています。また、低所得で共働きの家庭が多く、親も子どもと向き合う時間が十分にないうえに、震災復興の長期化による様々なストレスを抱えているため、子どもは家族や周囲の大人に心配をかけないように気を遣いながら生活しています。

このような状況の中、子どもたちは無意識のうちに「我慢すること」が増え、子どもらしい当たり前のことができずにいます。時間の経過により、自宅再建できた家庭と未だ仮設住宅で暮らす家庭、保護者の就労状況の変化、地域活動の再開など変化が見られますが、家庭環境による格差が出ています。

上述のような現状から、子どもたちが震災の影響による心身のストレスを和らげ、のびのびと遊べる遊び場、安心して自分らしく過ごせる「居場所」が必要とされています。

活動の内容

・子どもの集まり『みちくさルーム』は、2011年10月に陸前高田市内2地区で開始し、2013年より地域のニーズを受けて4地区で定期実施しています。原則5歳以上の子どもなら誰でも参加できるオープンな場で、土曜日・日曜日の午後の2時間、それぞれ月に2〜4回のペースで活動しています。地域の公民館などの公共施設を使用し、地域ごとに決まった大学にご協力いただき、子どもたちと一緒に様々な遊びや体験活動、自習のサポートなどを行っています。

・ 毎回の活動の内容は、体を動かす遊びや工作など、子どもの年齢や要望、環境によって大学生とともに検討し、様々な取り組みを行いました。ボール遊びや鬼ごっこなどの日常的な遊びや、年齢関係なく安全に遊べるストラック・アウト、屋外で思いきりはしゃぐことができる水鉄砲ゲーム、ペットボトルを利用した工作、絵本の読み聞かせなど、多岐にわたります。子どもの好奇心をかき立て、子どもが主体的に取り組めるよう、遊びの事前準備や、実施時の子どもへのきめ細かなサポートを心がけました。

・ 普段の活動に加え、様々な特別行事を実施しました。5月はより広い環境で体を動かすイベントに参加、7月は地元住民による案内で地域を歩いて自然や文化を知り、子どもが撮影した写真で地図をつくる「おさんぽマップづくり」、9月は遠足行事で屋外のレクリエーション施設にバス引率し、広い自然の中で五感を使いのびのびと遊びました。また、『みちくさルーム』のつながりで、震災前より行われている地域の子どものお祭りに、地元青年部より恊働開催の依頼を受けて、継続参加している協力大学とともに4月より時間をかけて企画し、8月に開催しました。

・ 今期の新たな取り組みとして、7月に臨床心理士によるスタッフ・ボランティア向けの第一回目の研修を実施し、活動の内容や流れ、子どもに接する上でのアドバイスを受けました。ほか、子どものグリーフサポートに関する支援者向け研修にスタッフが参加し、震災による子どものストレスケアの知識を得ながら、活動現場で実践しました。

広報活動にも注力し、毎回の活動の様子を団体ホームページやFacebookで報告するほか、新たにパンフレットを作成・配布しました。また、会員制の「みちくさサポーター制度」を新設し、年会費をいただきながら会員とコミュニケーションする仕組みをつくるなど、現地の情報を広く発信しながら、長期的に活動を継続できるよう努めました。

活動の成果

・ 参加している子どもからは、「みちくさルーム、毎回行くに決まってるじゃん!」、「みちくさルームの夢を見たよ。だからまた来た!」、「引っ越して、みちくさルームに行けることになったよ!」などの声があり、子どもがみちくさルームに想いを寄せて楽しみにしていることが窺えました。
・ 少子化が顕著に進む中でも、4地区のうち2地区では子どもの参加者数が増えており、保護者や子どもの間で『みちくさルーム』が広まっています。継続すること、スタッフや学生が学びを得ることで、個々の子どもへの理解や、活動の内容が深まり、子どもがより楽しく安心して過ごせる場として機能しています。
・ 毎回の活動に参加するリピーターの子どもが増えており、4地区全体で、各地区の実施回数のうち半分以上参加したことのある子どもが27名、うち2名は全ての実施回に参加しています。
・ 同時に、普段は地元のスポーツ少年団や習い事などで毎回の活動には参加することが難しい子どもたちも、日程が合えば気軽に参加できるような、オープンな雰囲気作りに心がけ、1回でも活動に参加したことのある子どもの数は4地区全体で120名となりました。
・ 新たな参加者の事例としては、自宅を失い他地域の仮設住宅に住む子どもが、周囲に友達がおらず遊び場もなかったが、少しずつ『みちくさルーム』に参加しはじめて異なる学校の子どもたちと交流が生まれ、週末の居場所のひとつになりました。ほか、震災により週末を親戚の家で過ごす子どもが、他地域の『みちくさルーム』への参加を通じて異なる地域の子どもとも仲が深まり、地域をまたいで子どもが交流できる場になっています。
・ 子どもが遊びを生み出したり、学生企画の遊びをアレンジするなど、子どもがより積極的・主体的に活動に関わるようになり、「自分」を発揮する機会になっています。事例では、震災により近所に友達がいなくなり、人と関わる機会が減って少し消極的だった子どもが、大人のサポートの中自ら遊びを考案し、皆でその遊びを楽しんだ時にこれまでにない満足げな表情を浮かべていました。震災によって減少した「人との関わり」をつくり、自己を表現できる環境をつくることで、子どもたちが心を解放し、子どもらしく生き生きと過ごす姿が見られました。
・ Facebook などWEBを通じた活動報告では、保護者が毎回「いつもありがとうございます、子どもがとても楽しみにしています」等のコメントをくださり、また地元住民のページ閲覧者も増えました。保護者以外の住民からも、団体や活動に対して「いつも子ども支援でがんばっている」「子どもたちのために、今もボランティアの方が来てくれてありがたい」といったお声をいただくなど、「地元団体」としての地域での認知や信頼の高まりを感じています。
 

寄付者へのメッセージ

皆様のあたたかなお気持ちのおかげで、子どもたちがのびのびと「遊ぶ場」、自分らしく過ごせる「居場所」を継続することができ、誠にありがとうございました。復興のスピードよりも早く成長していく子どもたち。「未来」を語られることの多い子どもたちの未来のためには、「今」が重要と感じています。まだまだ変わらない現状の中、震災により失われた「当たり前の日常」の中で、日々小さな体験を重ねて成長していく姿を、今後も長く支えていきたいと考えています。どうか今後とも、東北の子どもたちにお心を寄せていただけますよう、よろしくお願いいたします。

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