子どもサポート基金 子どもサポート基金国立大学法人 福島大学

2015年07月08日

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「OECD東北スクール」 岩手・宮城・福島県の中高生100名を東日本大震災からの復興の担い手として育成する創造的復興教育プロジェクト

東日本大震災で被災した子どもたちが主体性を発揮し、自らの力で東北地方の魅力をPRする国際的なイベントの企画・実践を行い、地域の復興、海外への地域アピールに貢献することなどを通じて、子どもたちのリーダーシップ、実践力、国際性などの育成を図る教育プロジェクトを、2年余りに渡り実施しました。

基本情報

活動期間
2014年4月~2015年3月
活動地域
東北各地区、東京都、フランス パリ市など
支援人数
100名
活動人数
スタッフ10名、ボランティア50名
連携団体
  • 文部科学省
  • OECD
  • 在日フランス大使館

写真

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活動の背景・内容

活動の背景

OECD東北スクールは、震災後、被災地の教育関係者とのヒヤリングに基づき、これまでの「復元・復旧」型の教育を目指すのではなく、「21世紀に求められるスキル・能力」を身に着けた問題解決型人間をつくる「未来創造」型の新しい教育制度・新しい人材育成を目指して立ち上げられました。

 

震災の復興は、すぐにできるものではなく、長期的・戦略的に取り組む必要があり、それを担う子どもたちが、震災で住む地域のみならず、産業面も含めて地域を復興していくためには、粘り強さや長期で物事を構想する力や、「21世紀に求められる能力」(主体性、自立、リーダーシップ、実践力、国際性など)を持って、取り組んでいくことが求められ、これらの能力を身に着けてほしいと考えました。

 

また震災後、東北地方を活性化していく上で、産業や観光をはじめとする東北の経済活動を活性化していくことが急務でり、こうした経済活動に直接訴えることのできる取組のひとつとして、海外での東北地方のPRイベントを位置付けました。こうしたイベントを、こどもたち自らが企画・実践することにより、子どもたちに今後の東北地方の復興について考える素地を作るとともに、東北の復興・経済活性化に貢献し、イノベーション創造につながる人材になってもらうことを目指しました。

活動の内容

1. 活動の概要
OECD東北スクールは、東日本大震災で被災した子供たちが主体性を発揮し、自らの力で東北地方の魅力をPRする国際的なイベントを2014年(平成26年)夏に、パリで行うことをプロジェクトゴールとし、このイベントの企画、実践を通して、地域の復興、海外への地域アピールに貢献することを目的としています。またこの過程を通じて、子供たちのリーダーシップ、実践力、国際性の育成を図り、結果的には東北地方の経済活性化に必要な将来の産業、イノベーション創造につながる人材育成を図ることを目指しています。
 
参加者は、福島県(大熊町(会津若松市に避難)、伊達市、相馬市、二本松市、いわき市)、宮城県(女川町、気仙沼市、南三陸町)、岩手県(大槌町)の9つの地域から、生徒約100名と教員、NPOスタッフが参加。エンパワメントパートナー(応援団)として、東京大学教育学部附属中等教育学校と、奈良女子大学附属中等教育学校の生徒、教員も参加しました。
 
 
2. 活動実績
<集中スクール(全員でのワークショップ)>
開催期間:2012年(平成24年)3月から2014年(平成26年)3月までの期間、春・夏に計5回
 
開催地:日本国内・東北及び東京。参考まで、スクール開催地は下記の通り。すべて実施済。
特に、8月4-7日に東京国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されました第4回集中スクールには、皇太子殿下、妃殿下も会場にお越しいただき、生徒の活動報告を聞かれ、励ましのお言葉をいただきました。
 
第1回 2012年3月 福島県いわき市
第2回 2012年7月 福島県いわき市
第3回 2013年3月 宮城県気仙沼市
第4回 2013年8月 東京都渋谷区
第5回 2014年3月 岩手県滝沢市
 
<地域スクール>
開催期間:各集中スクールの間の期間
開催地:参加者の出身地区にて、各チームが東北各地で活動。
 
<公開リハーサル1>
開催日:12月25〜27日 (公開リハーサル 12月26日)
開催地:古滝屋・湯本第一小学校 ・スパリゾートハワイアンズ
 
<公開リハーサル2>
開催日:2014年6月14日~15日
開催地:福島大学において、最終リハーサルを行った。
 
<プレイベント>
開催日:2014年8月12日~14日
開催地:東京国際フォーラム(丸の内キッズジャンボリー内)で一部生徒により、パリへの出発前最後の告知活動を行った。
 
<東北復幸祭>
開催日:2014年8月30日、31日
開催地:フランス・パリ市、シャンドマルス公園
集客数:2日間で約15万人を集める。
 
開会式の主な出席者: ジャン・フランソワ・マルタン パリ副市長(アンヌ・イダルゴ パリ市長は、翌日ブースを訪問いただいた)、OECD日本政府代表部 兒玉大使、OECD玉木事務次長、OECD教育・スキル局シュライヒャー局長、文部科学省 山中事務次官、他現地関係者、渡仏した参加生徒・スクール関係者全員
 
メディア露出(パリ):東北復幸祭の様子は、France 3(2014年8月30日)のTVニュースはじめ、各種メディアに取り上げられました。
 
メディア露出(日本):NHKはじめ、各種TV,新聞で多数取り上げられました。
 
イベント内容:
東北復幸祭のテーマ、「死と再生、未来へとつなぐ」に基づき、以下のイベントを実施しました。
 
■メイン会場
(1)津波と勇気のバルーン(福島県・いわき市)
(2)ドミノ倒し(福島県・いわき市)
(3)100の物語のトーテム
(4)賛同企業の提灯の展示
(5)天旗の展示(宮城県・気仙沼市)
(6)「書」と「のぼり」の展示(福島県・二本松市)
 
■ステージ
(1)オープニング
(2)東北と東日本大震災、OECD東北スクールの紹介
(3)参加チームとアトラクションの紹介
(4)イメージソングの披露とミニライブ
(5)鹿子躍(宮城県・戸倉)
(6)さんまdeサンバ(宮城県・女川)
(7)「語り」(福島県・いわき、他)
(8)福島、宮城、岩手3県のアピール
(9)協賛企業等のアピール
(10)世界へのメッセージ
 
■生徒の地域ブース 
(1)スタンプラリー
(2)各地域を紹介する写真と映像記録
(3)東北各地の特産品の紹介
(4)生徒の企画したゼリーの紹介(福島県・伊達市)
(5)東北の祭りの紹介(福島県・相馬市)
(6)放射能問題と再生可能エネルギーの実験とジオラマ(福島県・安達)
(7)天旗Tembata(宮城県・気仙沼市)
(8)「ふるさと女川」のディスプレー(宮城県・女川町)
(9)ご当地キャラクター
(10)「書」のパフォーマンス
(11)日本文化・遊びの紹介
(12)パリ応援団による友情のブース
    他
 
<桜の植樹・生徒大人国際会議>
9月2日には、代表生徒、関係者により、OECD東北スクールの記念式典として桜の植樹、また今回の2年半の経験をベースに、2030年の学校を考えるというテーマで国際会議を開催しました。
開催日:2014年9月2日
開催地:フランス・パリ市、OECD本部
 
主な出席者(植樹):OECDグリア事務総長、OECD玉木事務次長、OECD教育・スキル局シュライヒャー局長、OECD日本政府代表部兒玉大使、OECD各国政府代表部大使・代表部関係者(約20か国)、生徒代表・スクール関係者代表 合計約100名
 
主な出席者(国際会議):OECD教育・スキル局シュライヒャー局長、OECD各国政府代表部大使・代表部関係者(約10か国)、生徒代表・スクール関係者代表 合計約80名
 
国際会議の内容:
 国際会議(生徒・大人合同熟議)は「私たちの学校、私たちの未来、2030 年の学校」というテーマで、OECD 統計による2030 年代の社会課題に対応する学校を5チームに分かれて構想し、海外からの批評も加味して報告し合い、コンペで1位を決めるというものである。
 チームごとにプレゼンテーションを行い、公開投票の結果、グループ2のプラン「グローバル・アントレプレナーシップ・アカデミー東北」が1位となった。講評では「これまで専門家がやっていたが公教育のデザインを、生徒達が行うという点で大きな意義があった。」とされ、今後このプランに他のプランも加味し、実現に向けてブラッシュアップを重ねていく。
 
各チームから出されたプランは以下の通り;
■グループ1:Society in School(学校の中に疑似社会をつくり、学校間で交流を行う)
■グループ2:グローバル・アントレプレナーシップ・アカデミー東北(校内で会社を立ち上げ、企業活動を行う)
■グループ3:TOMODACHI(校内に多様な世界の縮図を作り、グローバルネットワークを構築)
■グループ4:地域に新しい価値を創出する「地域スクール」(地域の課題解決の中核機関)
■グループ5:Orbis(世界規模の学校ネットワーク。どこにいても世界中を学ぶことができる)

活動の成果

OECD東北スクールは、地域復興の担い手に必要なKPI(Key Performance Indicator)を「好奇心」「発想力」「問題解決力」「巻き込み力」「発信力」「チームワーク力」「マネジメント力」「地域力」「グローバル力」の9つを設定し、その変化をモニタリングしてきました。2年半の活動を通しての生徒の成長は、生徒達の自己評価によると、この1年半の間に平均が「2」から「4」に変化し、プロジェクトの進行とともに目覚ましく向上しています。この生徒の成長をもたらした本スクールの教育的要素(成長要因)のトップ3 は、他地域の生徒との交流(平均71%)、異学年の生徒との交流(56%)、地域の将来・未来に対する議論・活動(54%)でした。
 
生徒の発想力、行動力に刺激を受け、関わった教師、関係者も学校以外の人々との交流、経験を通して、成長することができました。例えば、それまで自分の学校の仕事オンリーだった教師が、本プロジェクトを通して地域のJAと共同してゼリーを開発し、地域に大きな自信を与えたのみならず、資金調達や広報活動でも極めて重要な働きをしました。この教師の成長については、10月28日OECD本部で開催された教育政策委員会(EDPC)で報告し、多くの参加者から賛同の意見をいただきました。また、各地域の参加形態や参加者の多様性により、こうした教育プロジェクトをつくる上で必要な多方面のモニタリングをすることができました。
 
支援対象者生徒の声(一部):
▶2年前の自分を考えると、復幸祭に参加してステージで自分の思いを伝えるなんて信じられなかった。でも、何とか自分の言葉で伝え、聴いてくれた人たちから「すごく良かった!」「素晴らしい!」「話してくれてありがとう」と声をかけてもらったときは、もうOECD 東北スクールに参加して本当によかったと思いました。
 
▶ 2 年半活動してきて、2 年半前の自分がこのスクール・復幸祭を見たらとても驚くだろうと思います。このスクール・復幸祭の2 日間、とても忙しくつらいことも多くありましたが、それ以上に楽しく達成感でいっぱいでした! この2 日間、「自分から」という行動が前よりも増えたように思います。「自分から」これができなくてもどかしく、そんな自分が嫌で嫌でしょうがなかったので、今回、できる自分を知ることができて良かったです。

寄付者へのメッセージ

2011年の第1期子供サポート基金のご支援から、4年に渡り、OECD東北スクールを支えてくださいましたことに、心より感謝申し上げます。4月14日の発足記念シンポジウムでも報告させていただきました通り、OECD東北スクールは、更に発展した形で、具体的な後継が立ち上がりました。
今後とも、未来の東北を、そして日本をささえ、真に活躍できる人材の育成、そして地方の活性化に向けて取り組んでまいります。どうぞ引き続き、ご支援、ご協力の程、お願い申し上げます。

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