子どもサポート基金 子どもサポート基金公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

2015年07月23日

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被災による経済的困窮世帯の子どもの学習・進学意欲向上のためのプログラム

被災によって経済的に困窮した家庭の小学生~高校生の学習意欲・進学意欲を向上させ、学校外教育クーポンの有効な利用を促進するために、大学生ボランティア(=ブラザーシスター)を育成し、子どもたちのもとに派遣(又は電話)する。本助成活動では、マネジメントを担う大学生スタッフの育成を行い、活動を強化する。

基本情報

活動期間
平成26年4月~平成27年3月
活動地域
 宮城県仙台市、石巻市、岩手県・宮城県・福島県の沿岸部
支援人数
263
活動人数
スタッフ5名、ボランティア94名
連携団体
  • ハタチ基金
  • NPO法人ブレーンヒューマニティー

写真

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    マネジメントチームのミーティング風景
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    ブラザー・シスター養成研修のワークショップ
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    ブラザー・シスターの集合写真
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    ブラザー・シスターによる募金活動

活動の背景・内容

活動の背景

■震災によって生まれた「教育格差」と「貧困の世代間連鎖」の防止

震災による家庭の経済的困窮によって、教育格差が生まれた。学校教育は平等に保障される一方で、学校外教育の機会は、家庭の所得に大きく左右されるため、教育格差が生まれやすい。被災した子どもが低学力・低学歴に陥った場合、就業に影響するため、今後被災地では貧困が世代間で連鎖するリスクが高い。

①親の雇用状況の悪化、収入減少

2014年度に実施した「被災地・子ども教育調査」によると、震災以前と比較して父親の非正規雇用就業及び無職の割合は、震災前に比べて7.0ポイント増加した。また、年収250万未満の低所得家庭も震災前と比べて8.3ポイント増加した。

②経済状況の悪化による教育機会の喪失

上記の調査によると、雇用状況の悪化や収入減少が被災地の子どもの学習機会に影響を与えている。放課後に「宿題以外の学習を全くしない」と答えた子どもは、相対的貧困世帯の子どもの方がそうでない子どもよりも7.9ポイント高かった。また、通塾していない子どもの割合も、相対的貧困世帯の子どもの方がそうでない子どもよりも9.1ポイント高かった。

【出典】 『被災地・子ども教育調査』 チャンス・フォー・チルドレン(2014)

 

■学習・進学意欲の低い子どもの意欲形成

・上記のような教育環境の悪化を受けて、子どもたちの学習や進学に対する意欲が低下している傾向にある。

・そこで、当法人ではより個別的な支援を行うために、支援対象の子どもを①親の教育関心度②子どもの学習意欲の2軸で分類した。

・子ども本人の意欲が低下している子ども(B領域)に対しては、教育機会の保障だけでなく、意欲を高めるためのアプローチが必要だと考える。

 

⇒子どもたちの意欲形成のためには、大学生ボランティア(=ブラザー・シスター)による面談活動をこれまで以上に強化する必要がある。

⇒そのためには、ブラザー・シスター同士が学び合えるコミュニティを形成することが必要である。そこで、2014年度は本助成金を活用して、大学生スタッフによるマネジメントチームを育成し、大学生主体の自立的な組織作りを目指した。

活動の内容

■大学生マネジメントチームの育成(本助成金を原資とした活動)

ブラザー・シスターのコミュニティを形成するために、大学生組織のマネジメントを担う大学生スタッフの育成に注力した。

※マネジメントチームの大学生スタッフも無給のボランティアである。

①大学生マネジメントチームの組成

2014年4月~5月にかけて、ブラザー・シスターで活動する大学生からリクルーティングを行い、15名の大学生がマネジメントチームとして活動を開始した。スタッフの役割分担や組織体制作りを行った。

②専従職員・大学生育成担当スタッフによる指導・育成

マネジメントチームの基盤構築にあたり、2014年度は、専従職員3名(フルタイム2名、非常勤の担当スタッフ1名)で大学生スタッフを育成する体制とした。大学生スタッフが主体となって、各種ブラザー・シスター向け研修や交流イベント等を企画運営し、それらを職員がバックアップした。また、マネジメントチームによる週1回の定例会議にも職員が出席し、恒常的な大学生スタッフの指導・育成を行った。

③子どもとの面談終了後の振り返りの実施

マネジメントチームの大学生スタッフが中心となって、ブラザー・シスターの日々の面談終了後の振り返りを実施した。ブラザー・シスター同士で子どもと話したこと等を共有したり、交流を深めることによって、ブラザー・シスターのコミュニティが形成され、ボランティア継続率が10%以上向上した。

④トップマネジメント研修

マネジメントチームの学生スタッフの中心メンバー4名が、NPO法人ブレーンヒューマニティーが主催する宿泊型のマネジメント研修に参加した。専門家による組織マネジメントに関する講義を受けるともに、KPI設定・事業計画策定を行った。また、年間900人の学生が主体となって組織運営をしているブレーンヒューマニティーの大学生スタッフと交流することで、多くの気づきや学びを得ることができた。

・日 程:2014年9月14日~16日(2泊3日)

・会 場:関西学院大学上ヶ原キャンパス スポーツセンター

・参加人数:マネジメントチームの大学生スタッフ4名、職員1名

・講 師:川北秀人氏 (IIHOE代表者/市民活動団体や企業CSR等のマネジメント支援の専門家)

⑤ファシリテーター研修

マネジメントチームの学生スタッフ及びブラザー・シスターが、ボランティア養成研修や定期研修、日々の会議におけるファシリテーション能力を向上させるために、外部専門家による研修を受けた。

・日 程:2014年11月29日(日帰り)

・会 場:仙台青葉カルチャーセンター

・参加人数:マネジメントチームの学生スタッフ、ブラザー・シスター17名

・講 師:長尾文雄氏(フリーランス/コミュニケーショントレーニングの専門家)

⑥大学生マネジメントチーム次年度計画立案合宿

合宿では、代表者や職員による団体のビジョン・今後の課題等について共有した。それらをもとに、大学生マネジメントチームの2015年度活動計画を立案した。

・日 程:2014年12月6日~7日(1泊2日)

・会 場:エスポール宮城

・参加人数:マネジメントチームの大学生スタッフ12名、職員4名

 

 

■被災児童・生徒に対する学校外教育クーポンの提供

被災児童・生徒263名に対して、塾や習い事で利用できる学校外教育クーポンを提供し、被災により失った教育機会を保障した。

■ブラザー・シスターによる子どもとの面談活動

・教育クーポン利用者263名に対してブラザー・シスターが電話や面談を行い、進路や学習の相談に応じることで、クーポンの有効利用を促進した。(面談頻度:中高生=毎月1回、小学生=2ヶ月に1回)

・外部専門家によるブラザー・シスター養成研修及び定期研修を行い、新たに54名のブラザー・シスターを養成した。(養成研修:6月14日、15日/定期研修:偶数月の第3水曜・第3土曜)

活動の成果

・本助成を通じて、マネジメントチームの大学生スタッフを育成し、組織の基盤を作ることができた。マネジメントチームの大学生スタッフが中心となって、毎日の子どもとの面談の振り返りの時間を作り、ブラザー・シスターが持つ悩みや子どもの変化等を共有した。また、研修会や交流イベント等のプログラムを、大学生スタッフが主体となって開催することができた。

・これらを通じて、ブラザー・シスターのボランティア継続率が向上する等の成果があった。

【定量的な成果】

・大学生マネジメントチーム人数:15名

・ブラザー・シスター人数:94名(2013年度61名)

・ブラザー・シスター継続率:73%(2013年度62%)

 ※算出方法:2015年度も活動継続するブラザー・シスター人数/2014年度に登録したブラザー・シスター人数

・教育クーポン利用率:集計中(2013年度82.9%)

 ※算出方法:2014年度に利用されたクーポン金額/2014年度に提供したクーポン金額

■子どもの声

私は高校3年生の受験生です。私はこのクーポンで、塾に行って、自分の分からないところや苦手な科目について勉強しています。私の将来の夢は災害医療にたずさわる看護師になることです。災害医療にたずさわるためには、たくさん勉強しなければなりません。災害医療看護師は、日本でも数がとても少なく、高度な技術が必要です。そのため、私は高いレベルの大学へ進む必要があります。しかし、私は母子家庭で、たった一人しかいない家族の母が震災の影響で仕事を失ってしまったため、塾へ行くのもやっとでした。クーポンを利用できるという事は、私にとってもっと学習できるチャンスが増え、理解が深まるという事です。私に学習のチャンス、夢を叶える一歩をくださり、本当にありがとうございました。これから夢に向かって頑張ります。

(福島県 高校3年生 女子)

寄付者へのメッセージ

この度は、多大なご支援をいただき、本当にありがとうございます。この1年のご支援のおかげで、被災によって困難を抱えた子どもたちを支援する大学生ボランティアの育成に注力し、大学生が自立的に支援活動を継続するための基盤を作ることができました。また、2015年3月まで私たちの支援を受けて仙台市内の大学に入学した子どもが、今春から当法人の大学生ボランティアとして活動することになり、少しずつ支援の輪が広がっていることを実感しております。今支援を受けている子もたちが、やがて支援の担い手へと成長し、被災地の復興を支えてくれると信じて、これからも活動を継続していきたいと思います。今後ともご支援ご協力の程よろしくお願いいたします。

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