活動の背景
本事業を行っている宮城県南三陸町は、震災から4年が経った今でも土地の嵩上げ工事が終わっていない。復興の指標とされている建設中の災害公営住宅も1601戸中306戸の完成に留まっている。多くの町民は、これから仮設住宅から災害公営住宅へ移り住む。町民のコミュニティにおける問題は膨らむ一方である。
本事業では、「自らの町のために何かしたい」と思っている高校生のサポートと子どもたちの居場所支援を並行して行った。2014年4月から高校生のサポートをはじめ、フィールドワークやワークショップを行ってきた。しかし、高校生の表現力が十分ではなかったため、想いの共有が図れない場面が多々見られた。
本事業を通し、子どもたちへ①やりたいことを実際に行動に移し、失敗や成果から学ぶ力 ②自らの想いを表現し、発信する力 ③活動の中で刺激を与え合うことの素晴らしさを実感する力 の3つの力をつけることを目標とし活動を行ってきた。
活動の内容
本事業は、2014年10月〜2015年3月まで、「自らの町のために何かしたい」と思っている高校生のサポートと子どもたちの放課後の居場所支援を並行して行ってきた。平日2日、週末1日の計3日の支援を行った。平日は、フリースペースを開放し子どもたちの居場所支援を行い、週末は「町のために何かしたい」と想っている中高生と活動を行った。10月〜3月まででフリースペースは計42回行い、のべ212人、高校生のサポートについては計28回活動しのべ139人のサポートを行った。
サポートを行っている高校生団体COMは、現在9名の高校生で構成されている。2014年4月当初の3名に比べ、少しずつメンバーが増え始めた。彼女たちが意欲的に活動を続けることで、思いのある高校生が集まってきた。今では、誰がリーダーとなることなく全員がチームの中心となり活動を進めている。参加人数増加のために、高校生自身が高校生との交流会で活動発表をし、スポーツ交流などで当団体の雰囲気を知ってもらえるよう働きかけた。
本助成期間の具体的な活動としては、話し合いやポストイットを使用したワークショップ、フィールドワークや思いの共有と言語化などである。作成したリーフレットは、南三陸のおしゃれなスポットを掲載したリーフレットになっている。上期に作ったリーフレットよりも細部にまでこだわっており、高校生の想いが事細かに表現されている。講師の方々や大学生のサポートから、「何を表現すればいいのか」「誰に表現すればいいのか」を深くまで考えており、「伝える」ことの必要性と重要性を感じながら作業を行うことができていた。高校生の成長が成果物としてうかがうことができる。
ここに至るまで、高校生に多くのインプットの機会を提供した。外部交流人数は250名以上にも及ぶ。今では、高校生の考え方が広がり、物事の着眼点が変わりつつある。交流した人は大きく3つに区分される。1つめは大学生たちである。2つめは、お呼びした講師の方々。3つめは自らの町のために活動をしている他地域の高校生たちである。
大学生と交流の機会をもったことで、全員が「大学生のイメージが変わった」と口を揃えている。大学生は自分のやりたいことに対して自由に活動をおこせる人として位置付け、身近なお兄さんお姉さんのように関わっている。今でも、高校生が活動で困ったときなどはアドバイスをもらうなど、連絡を取り合っている。今回は、自身でプロジェクトを行っている大学生の話を聴く時間を設けた。プロジェクトを行うようになったきっかけや、プロジェクトを行っていく上での困難などを聴いた。また、大学生と共同で企画を作る機会も設け、企画を作っていく中でどんな準備をしていけばいいのか、準備をする順序などを学んだ。
講師の方々は、専門的なスキルを学ぶためにお呼びした。高校生たちが活動を行うにあたって、一人目の講師からはプレゼンテーションについて学んだ。背景としては、人の前に立ち話す機会が多くなり「伝える」ということに対して意識が向いたのからである。これにより、何を伝えればいいのか、どのように伝えればいいのか、伝えてどうしたいのかなど「伝える」ことに対して非常に具体的になった。二人目の講師からはアイディアの創発の仕方を学んだ。背景としては、活動をしていく中でより良いアウトプットが必要だと思ったからである。講師の方から「持っている知識を引き出すだけではなく、関連している言葉を全て引き出し結びつけることで良質なアウトプットがうまれる」と教わり、他の場面でも応用している様子が見られた。三人目の講師からはデザインのイロハを学んだ。背景としては、制作物が多くなり、デザインの知識を取り入れた上でもっともっといいものを作っていきたいという思いからである。対象や自分たちの想いを明確にしてから作り出さないとまとまりのないものになることを知ることができた。
他地域で活動する高校生との交流を行った。10月に石巻の高校生カフェ「 」(かぎかっこ)、くじらステーションとの交流を行った。自分たちには無かった発想で活動を進めている高校生たちに刺激を受け、自分たちももっと大きなことをしたいと意気込んだ様子を見せていた。12月に大槌のコラボスクール、宮古のみやっこベース、気仙沼の底上げYouth、女川の女川向学館と交流を行った。多くの高校生が自らの町のため活動をしていることを目の当たりにし、驚いていた。それぞれの地域の高校生が真剣に取り組んでいる話を聴き、自分たちが今後どのように活動を進めるのか考えを改める機会になった。同世代の活動は気にかけているらしく、他地域の高校生の活動を随時SNSでチェックしている。
本助成期間で、活動に関わった高校生たちは、自分たちの成長を具体的に言語化することができている。上期までは自分たちの成長を感じてはいるもののそれをうまく表現することができなかった。表現できるようになったのは自分たちの成長だけではなく、自分の想いや、他の人の想い、状況や様子もうまく言語化することができている。言語化できるようになった故にぶつかってしまうこともしばしばあった。しかし、この状況は好転する傾向にあり、自分たちで解決方法を見つけ出している。本助成で得たものは、高校生たちの成長をさらに加速させている。