2016年08月31日
TOMODACHI女子高校生キャリアメンタリングプログラムin福島2015
東日本大震災、福島第一原子力発電所事故による風評被害などで、生活環境が変わり、将来像の見えにくい福島県内在住の高校2年生女子生徒120名の今後のキャリアを支援する活動
女子高校生の普段の生活では、大学生や留学生、社会人女性と接する機会はほとんどなく、身近な大人は学校の先生や家族・親戚が中心となり、ロールモデルを見つけることはなかなか難しい。また、結婚や子育て、既成の価値観も強く、視野もなかなか広がりにくい。福島県においては、東日本大震災後は放射線の風評被害や健康問題などで将来に不安をもつ女子高校生も多いため、彼女たちの不安を払しょくし、前向きにキャリアを考えられるようになることを目的に、女子高校生に特化したキャリア教育プログラムを実施することにした。そして活動を通じて学んだことを、後輩の高校1年生に伝えるキャリアイベントを企画実施することで、自分自身が学んだことをより深く理解し、次世代につなぎ、未来に向かって力強く生きる礎とすることを目指し、また、この活動を理解し応援してくれる高校や教育委員会の方々にとっても、自校で実施するキャリア教育の在り方を考えてもらう機会とすることを目的とした。
◆STEP1:ヤングアメリカンズ 歌とダンスのワークショップ
日時:2015年8月10日(月)〜13日(木)
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
人数:女子高校生116名、大学生メンター20名、プログラムアシスタント(大学生)4名、ヤングアメリカンズ40名
内容:116名の高校生と20名の大学生メンターがヤングアメリカンズのワークショップに参加し、全員で力を合わせて3日間で1時間のショーを作る。異なる27校から集まった高校生と、メンターがだんだんと心を開き、自分の人生を前向きに受け入れて全員で一つのものを創りあげた。初めて会った生徒同士の絆ができ、これから半年を共に過ごす仲間としての信頼関係の基盤ができた。
◆STEP2:世界中から訪れる外国人留学生とのセッション
日時:2015年10月31日(土)〜11月1日(金)
会場:国立磐梯青少年交流の家(福島県猪苗代町)
人数:女子高校生102名、大学生メンター20名、プログラムアシスタント(大学生)3名、留学生(アメリカ、中国、韓国、インド、インドネシア、ベトナム、ネパール、ウズベキスタン、シリア、スペイン、ドイツ、アイスランド、フィンランド、グレナダ)20名
内容:多くの国からなぜ留学先に日本を選んだのか、自身の夢やキャリアをどう描いているのか、日本と母国の違い、留学するまで彼女らが直面していた環境・状況、およびそこで努力した苦労や葛藤などの話をするセッションを実施。改めて日本・福島の良さを再発見する同時に、新しい環境に自ら飛び込んだ彼女たちから、勇気や好奇心を持つことの大切さを学んだ。現状に甘んじないでチャレンジをしようという気持ちを持ち、まずは身近な目標を設定し、次回STEP3までに各々が自身に挑戦を課した。
◆STEP3:日本・世界で活躍する社会人女性とのセッション
日時:2015年12月19日(土)〜20日(日)
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)
人数:女子高校生91名、大学生メンター20名、プログラムアシスタント(大学生)4名、社会人女性20名(キッコーマン株式会社、全日本空輸株式会社、株式会社パソナ、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、東日本旅客鉄道株式会社、株式会社ファミリーマート、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、株式会社ローソン)
内容:高校時代からどのようなキャリアを描き、どんな人生を歩んできたかを語るセッションを行った。世の中における会社の役割や可能性を知るとともに、困難な状況を自分の力で乗り越えて働く女性の価値観やスタイルに触れた。社会で活躍する女性の姿を目の当たりにし、憧れとなる将来のロールモデルを見つけることとなった。
◆STEP4:後輩向けキャリアイベントの企画・実施
日時:2016年1月30日(土)〜1月31日(日)
会場:いわき市文化センター(福島県いわき市)
人数:高校2年生104名、大学生メンター19名、プログラムアシスタント(大学生)4名、留学生4名(アメリカ、シリア)、社会人女性5名(協力企業:キッコーマン株式会社、全日本空輸株式会社、株式会社パソナ)、高校1年生103名
内容:ここまでの活動を振り返り、このプログラムで学んだこと、そしてこれから自分自身どのように生きていきたいかをチームで企画して後輩の高校1年生に向けてプレゼンテーションを行った。学んだことを後輩に継承するとともに、人に伝えるという行為を通して、学んだことをより深く理解した。参加者となる高校1年生女子生徒は、大学生・留学生・社会人、そして高校2年生のプレゼンテーションを受けて学んだことをチームで発表し、今後の進路や将来を考えるキッカケを得た。また、高校の先生がたにも見学いただいた。
プログラム終了後に参加者と教員向けにアンケートを行った。プログラムでの多くの出会いを通じて、多様な価値観を認め、自分に自信をもち、チャレンジしようという気持ちを持つようになった参加者は、自分の将来・進路に対しても前向きに捉えられるようになっている。また、先生がたも生徒の変化を感じており、今後の進路選択に対して期待をもっている。
<参加者アンケートより>
◆このプログラムで学びがあった
・とてもよくあてはまる 94% ・ややあてはまる 3% ・どちらともいえない 3%
◆下級生にプログラム参加を勧めたい
・とてもよくあてはまる 86% ・ややあてはまる 9% ・どちらともいえない 3% ・ややあてはまらない 2%
◆高校2年生のコメント(抜粋)
・前は周りと比べてしまい自分に自信がありませんでしたが、自分と深く向き合っていくうちに自分が何なのか、何をしたいのかなど、自分を知りました。それで自分が好きになり、自信もつきました。(いわき総合高校)
・考えが違う人たちと意見を共有することで、たくさんの視点から物事を捉えられるようになった。
また、たくさんの出会いを通して視野がぐんと広がった。(いわき光洋高校)
・自分でもわかるくらい積極的になって、授業で話し合う時も自分の考えをためらうことなく言えるようになりました。(あさか開成高校)
・挑戦することが楽しいと思えるようになりました。チャレンジすればするほどたくさんの知識が増えたり自分が成長したと実感できるのがワクワクすることなんだと改めて思えました。これからもチャレンジしてもっともっと成長した自分になりたいと思います。(磐城桜が丘高校)
・STEP1から4を通して、支えてくれる方々がこんなにたくさんいるんだということが一番私に勇気をくれた。(橘高校)
<教員アンケートより>
◆生徒を参加させてよかった
・とても思う 90% ・少し思う 10%
◆生徒の変化を感じる
・とても感じる 60% ・少し感じる 40%
◆他の生徒にも勧めたい
・とても思う 100%
◆先生のコメント(抜粋)
・プログラムを経験して自信がついた生徒が多い。自分の中の悩みに対する答えの方向性を見いだした者、実際に行動し挑戦することを知り、新たな挑戦を自らはじめた者など、学校生活の普段の場面でも、授業中の顔つきや、友人同士で話す声に変化が見られ、はっとさせられる生徒もいる。(橘高等学校・2学年担任)
・悩みや不安に直面した時にただ止まっていた生徒が、動きながら解決することを覚えました。「自分のために」から「誰かのために」視野が広がりました。(第一学院高等学校・キャンパス長)
・自主的に行動できる様子が見られた。英検などに積極的にチャレンジしている様子がみられる。
(磐城桜が丘高等学校・2学年担任)
・3.11の震災以降、明らかに福島の子どもたちは無意識に抑圧を受け、自分を表に出すことはいけないことのように我慢強くしている場面が多少見られます。学校の校内ではなかなかできない達成感と可能性の希望感や充実感、自分への自信の発見は今回の機会がなければ、大人になるまでなかなか得られなかったろうと思います。私にはできない、メンタリングでの覚醒を彼女たちにしていただき、本当にありがとうございました。(尚志高等学校・2学年担当)
<STEP4に参加した高校1年生のアンケートより>
◆参加してよかった
・とてもよくあてはまる 83% ・ややあてはまる 13% ・どちらともいえない 4%
◆2年生になったら半年間のプログラムに参加したい
・とてもよくあてはまる 56% ・ややあてはまる 31% ・どちらともいえない 11% ・ややあてはまらない 3%
◆高校1年生のコメント(抜粋)
・いつも消極的になってしまい自分がやりたいことがあってもできませんでしたが、挑戦と行動をしなければ人は変われないんだと思いました。(平商業高校)
・自分にもっと自信を持ちたいと思えたし、こんな先輩たちみたいなりたいと思いました。ぜひ二年生になったら、このプログラムに参加したいです。(いわき秀英高校)
・自分を見つめ直すきっかけになりました。今の自分にも何かしらできることがあるということを知りました。(郡山女子大学付属高校)
半年間のプログラムを通じて、参加した高校2年生は様々な変化を見せてくれました。応募時には、人見知りで自分の意見を言えない、他人の目が気になってしまう、自信がない、そしてそんな自分を変えたい、と話していた参加者が多かったのですが、グループワークや発表の機会を通じて自分の意見を持って表現する大切さに気がついたり、留学生や社会人などが堂々と話す姿を見て刺激を受けたり、何事にも挑戦することから始まると実感したりしながら、最後には高校1年生を前に堂々とした発表を見せ、少しずつ自信をつけたようです。
様々な女性の先輩と出会って話をする中で、将来こんな女性になりたいというロールモデルを見つけたり、今後の目標を見つけたり、将来に対しても前向きな気持ちを持つようになったという声を多く聞いています。半年間、チームメンバーと励ましあいながら過ごしてきたことも、彼女たちの今後の支えになりそうです。
アンケートやその後のヒアリングから、彼女たちの変化や成長を感じております。自分を表現すること、挑戦すること、自信を持つことの大切さを学び、視野を大きく広げているようです。この体験を今後の人生に活かし、他人と比較することなく、自分らし生き生きとした人生を切り開いていくことを願っています。皆様の温かいご支援に心から感謝申しあげます。ありがとうございました。
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