子どもサポート基金 子どもサポート基金特定非営利活動法人パクト

2016年07月04日

模造紙に思い思いのイメージを表現(小友町).JPG

陸前高田市内の子どものための居場所作りの継続実施および子どもと保護者に向けた情報発信を始めとする包括的な支援活動

市内4地区での子どもの居場所づくり、『みちくさルーム』の活動を継続実施するとともに、市内の子ども・子育て支援団体とのネットワークづくりを目的とした情報交換会議を定期開催する。その中で得られた情報をもとに、市内の子どもや保護者に向け、遊び場、イベント、子育て支援に関する有益な情報を発信する。

基本情報

活動期間
2015年4月~2016年3月
活動地域
岩手県陸前高田市
支援人数
9,417名
活動人数
スタッフ5名、ボランティア271名
連携団体
  • 神奈川大学
  • 上智大学 学生局 学生センター
  • 聖心女子大学

写真

  • 大学生ボランティアとおままごと(矢作町).JPG
    大学生ボランティアとおままごと(矢作町)
  • 参加した子どもからの手紙.JPG
    参加した子どもからの手紙
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    地元の方製作の「竹水鉄砲」で遊ぶ子どもたち(気仙町)

活動の背景・内容

活動の背景

岩手県陸前高田市の子どもたちは、震災により、家族や家、多くの遊び場を失った。震災から5年経過した現在も、学校の校庭には仮設住宅が建ったまま、昼休みや放課後、休日に使うことができず、登下校も徒歩からスクールバスになるなど、限られた時間枠で生活しており、思い切り遊ぶことや学校外で友達や人とふれあうことが少なくなり、運動不足やさまざまな体験の機会が奪われている。

道路には復興工事車両が行き交い、浸水区域や危険な場所が多く、多くの保護者も子どもだけで外出することを不安に感じている。また、低所得で共働きの家庭が多く、親も子どもと向き合う時間が十分にないうえに、震災復興の長期化による様々なストレスを抱えているため、子どもは家族や周囲の大人に心配をかけないように気を遣いながら生活している。

このような状況の中、子どもたちは無意識のうちに「我慢すること」が増え、子どもらしい当たり前のことができずに成長期を過ごしている。時間の経過により、自宅再建できた家庭と未だ仮設住宅で暮らす家庭、保護者の就労状況の変化、地域活動の再開など変化が見られ、家庭環境による格差が生まれている。

「みちくさルーム」では、子どもたちがのびのびと遊び、安心して自分らしく過ごせる居場所を継続的につくることで、震災の影響による子どもたちの心身のストレスを和らげ、健やかに成長できる一助になりたいと考えている。また、子どもたちが普段関わることのない大学生ボランティアと交流しながら、日常では体験できない遊びや工作などを通じ地元に対する良い思い出をつくる中で、生まれ育った地域に愛着を持ち、将来の復興に向け意欲を持つ大人に成長して欲しいと願っている。

活動の内容

⑴ 「みちくさルーム」の実施 【2011年10月より継続】

震災により多くの遊び場、生活環境を失った子どもたちのため、気軽に集える居場所づくりの活動を土曜日・日曜日の午後の2時間、それぞれ月に2〜4回の頻度で地域のコミュニティーセンター、公民館等において、協力大学の学生ボランティアと協働で実施した。活動地区は気仙町、広田町、矢作町、小友町の市内計4ヶ所でのべ1,417名の子どもたちの参加があった。各協力大学はそれぞれの地区の「みちくさルーム」を担当して活動を行い、のべ602名の大学生の参加者があった。

毎回の活動内容は、体を動かす遊びや工作など、子どもの年齢や要望、環境によって大学生とともに検討し、様々な取り組みを行った。ボール遊びや鬼ごっこなどの日常的な遊びから、普段経験できない、竹でできた水鉄砲遊び、模造紙を使ったすごろく遊び、新聞紙ホッケー、季節にちなんだ工作等を実施し、子どもたちが多様な体験を得られるよう心がけた。 また、通常の活動に加え、特別行事として、様々な体験活動を実施した。子どもたちの長期休暇中は、4日間の特別プログラム「楽習会」の実施、7月にドッジボールの日本代表選手によるドッジボール教室、9月に遠足行事で釜石市にある公園にバス引率し、普段の生活圏内では遊ぶことのできない遊具や広場でのびのびと遊ぶことができた。10月には、地元青年部と継続参加している協力大学とともに、秋のミニお祭りを開催した。昨年度に引き続き臨床心理士によるスタッフ・大学生ボランティア向けの研修も実施し、活動の内容や流れ、子どもに接する上でのアドバイスを受けた。昨年度に引き続き、3月には、継続して「みちくさルーム」に関わってくださる4大学の学生が集まり、学生中心に計画と準備を行い、「みちくさルーム学生交流会」を実施した。交流会の第一部では、各大学から「みちくさルーム」での活動報告を発表していただき、第二部では、「活動中、子どもへの対応・安全管理」に関するケーススタディを行い、第三部では、「今後のみちくさルーム 」、「活動への参加者を増やす方法」、「卒業してもできる支援」等、テーマ別に分かれたワークショップを行った。

⑵ 子ども支援ネットワーク会議運営 【2011年11月より継続】

毎月第三木曜日の午後、市内で活動する子ども支援団体や、教育機関、地域の方等が集まり、各団体の活動報告や子どもに関する情報等を共有した。通常の会議に加え、子どものための心理的応急処置(PFA)の研修も行った。研修では、災害などの緊急時に子どもへの声のかけ方やその後のフォローアップについて学んだ。また、震災から5年経過し、被災地でのこれまでの経緯や会議で集めた情報をまとめた冊子を作成した。

⑶ 子ども情報誌「たかたん」の発行 【2013年4月より継続】

子ども支援ネットワーク会議にて、市内の遊び場に関する情報が保護者に十分行き届いていないことが聞かれ、それを受け、市内の子どもや保護者に向けた情報誌を年に5回発行した。主な配布先は市内の小学校、保育所(園)、子育て支援施設、図書館等、のべ8,000名の方々に届けた。情報の内容としては、子どもたちの長期休暇期間に行われるイベント情報、健康に関する情報、絵本の紹介など、乳幼児から小学生、子育てする保護者に役立つ情報誌となっている。

活動の成果

⑴ 「みちくさルーム」の実施
 
⒈ 成果
 
2015年度も計画通り、より充実した「みちくさルーム」の活動を実施できた。子どもの参加人数は昨年の同時期と比較して増加し、6年目を迎えた現在も「みちくさルーム」に対する子どものニーズはあると見られる。主に小学生の参加者が多いが、今年度は未就学児から高校生までの参加も増え、幅広い年齢に対しオープンな居場所として活動を行う事ができた。また、開催している会場近くの仮設住宅に住む学区外の子どもたちが活動に参加したり、特別企画を地区合同で行ったことにより、子どもたち同士が交流できる場も提供することができた。10月に行った臨床心理士による研修では、活動を通して気になる子どもたちの様子について相談をしたり、子どもの発達について学ぶことにより、子どもの健全な成長を見守るための知識や意識を身につけることができた。また、市の教育委員会が募集・マッチングをしている市内の中高生ボランティアが「みちくさルーム」の活動に協力していただいたり、地元青年部の呼びかけにより子どもたちのためのお祭りを開催したり、地域住民とのつながりの場が増え、より地域に密着した活動を実施することができた。
 
また、「みちくさルーム」の活動を通して、大学生ボランティアが主体的に活動の準備・企画を行うことにより、より親身になって子どもたちと接する姿があった。積極的に関わる事により、被災地への関心がより深まっていく様子も伺えた。2月には、「みちくさルーム」の活動に参加している学生が主体となったフォーラムが開催された。フォーラムでは、震災6年目の復興支援や今後の地域の課題について学生同士が積極的に意見を交わしていた。震災から長い時間が経過している中、現地で活動を行っている学生にとっては、まだまだ支援の必要性を感じている様子があり、今後も支援に取り組む意欲が感じられた。震災について関心が薄れる中、「みちくさルーム」の活動を行っている学生からは、「今後も継続して子どもたちの居場所作り(みちくさルーム)に努めたい」と頼もしい意見も述べられた。3月に行われた「みちくさルーム学生交流会」では、4大学から計22名の学生と教職員6名が集まり、学生が主体となり活発な意見が交わされた。交流会では、学生同士が真剣に話し合いを行い、子ども支援へ対する熱い思いを感じる事ができた。交流会後のアンケート結果では 、「各大学がどのようなみちくさルームをやっているのか知れて良かった」、「今後の(子どもたちへの)対応のバリエーションが増えた」、「今後の取り組みに活用していきたい点が沢山あった」等の意見が多数あった。
 
⒉ 開催回数(特別企画含め)
 
気仙町:上半期(5月〜9月):18回 下半期(10月〜3月):22回  計:40回
広田町:上半期(4月〜9月):23回 下半期(10月〜3月):24回  計:47回
矢作町:上半期(5月〜9月):12回 下半期(10月〜3月):14回  計:26回
小友町:上半期(5月〜9月):11回 下半期(10月〜3月):17回  計:28回
 
⒊ 参加人数(2015年4月〜2016年3月)
 
・子どもの参加者数(のべ)
気仙町:396名
広田町:509名
矢作町:318名
小友町:194名
合計:1,417名
 
・ボランティアの参加数(のべ)
気仙町:201名
広田町:234名
矢作町:96名
小友町:71名
合計:602名
 
⒋ 受援者からの声
「あと何回寝たらみちくさルームなの?」(保育園児)
「(4月から)中学生になっても絶対参加する」(小学生)
「今日、スキーに行くのをずらして(みちくさルーム)に来た! 」(小学生)
「お友達と遊ぶ機会を作って下さり、本来の小学生が遊んでいる姿がそこにあり、子どもらしく、のびのびとしている姿を見ると、本当に有難いことです。 」(保護者)
「いつも子どもたちがみちくさルームの様子を楽しそうに話してくれています 」(地域の方)
 
⑵ 子ども支援ネットワーク会議運営
⒈ 成果
継続して会議を定期的に開催することで、市内で活動する子ども支援団体、行政機関、保護者等が協力し合える体制が持続できた。11月には、通常の会議に加え、支援者向けの研修を行い、普段会議に参加していない団体とつながる事ができ、次回の会議では研修で学んだ内容についての話し合いができた。また、子ども支援ネットワーク会議を発足した当時から現在まで参加した事のある方々に子ども支援ネットワーク会議を評価していただくためのアンケートを実施した。会議を通して、85%の方が「団体同士の仲が深まった」、90%の方が「有益な情報が得られた」と回答をいただいた。
 
⒉ 会議メーリングリスト登録者数:45名
 
⒊ 開催回数、参加団体数(個人参加含む)
・上半期(2015年4月〜9月):のべ39団体
・下半期(2015年10月〜2016年3月):のべ35団体
 
⒋ 会議参加者からの声
「自分たちが関わっている以外の子どもやその保護者の様子を知る事で、新たなニーズを知ったり、より活動を深められるきっかけとなっています」
 
⑶ 子ども情報誌「たかたん」の発行
⒈ 成果
上半期と同様、発行を通じて、市内に暮らす多くの保護者に向け、子育てに関する情報を直接伝える事ができた。保護者や子育て支援施設等からは、「たかたん」の情報を参考にして、活用しているという声が多く聞かれた。
 
⒉ 発行数:
第16号 2015年5月発行 発行部数1,700部
第17号 2015年7月発行 発行部数1,700部
第18号 2015年9月発行 発行部数1,700部
第19号 2015年12月発行 発行部数1,700部
第20号 2016年3月発行 発行部数1,700部
 
⒊ 主な配布先
市内の各小学校8校、保育所(園)9カ所、子育て支援施設、図書館等
 

寄付者へのメッセージ

皆様のあたたかなお気持ちのおかげで、子どもたちがのびのびと、自分らしく過ごせる居場所、「みちくさルーム」を継続することができ、誠にありがとうございました。東日本大震災から5年が経過し、当時小学1年生を迎えようとしていた子どもたちは、6年生になりました。小学校生活の中で、校庭を自由に使えないまま、小学校を卒業する子どもたちもいます。本来の子どもたちの姿が見られるようになるまで、長く支えていきたいと考えています。どうか今後とも、東北の子どもたちにお心を寄せていただけますよう、よろしくお願いいたします。

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