2013年06月27日
岩手県陸前高田市、気仙地区・広田地区・矢作地区において、子どもの心身のケアを目的とした、子どもの憩いの場「みちくさルーム」という活動を定期実施。
震災により多くの遊び場、家族、生活環境を失った子どもたちに対し、気軽に集えるコミュニティスペース「みちくさルーム」を地域の公民館等で定期実施。学生ボランティアと協力して遊びや学習のサポートを行い、子どもたちがのびのび過ごして震災によるストレスを発散・軽減させることを目的としている。地区別による実施回数は、気仙地区…延べ19回、広田地区…延べ20回、矢作地区…延べ4回(矢作地区に関しては、2013年2月開始)
【活動の背景】
震災後、子どもたちを取り巻く環境は一変。津波で自宅を流され、狭い仮設住宅で大きい声が出せない・勉強場所が確保できず集中できないなど不自由な生活をしている子どもが多くいること。また学校のグラウンドには仮設住宅が建ち並び、遊んだり運動する場が不足し、運動能力が低下していること。家族や親しい人を失うことによる悲嘆を抱えていること。このような様々な要因により、子どもの心身に負担がかかっており、環境改善・回復には長期的なケアが必要とされている。
また、子どもに一番近い親・家庭も負荷が大きい。震災による失業や住宅再建のための経済的損失、家族の喪失、移動にかかる物理的な負荷など、子どもを育てるうえで多くのストレスを抱えている。そのストレスは直接子どもに影響し、肥大すれば虐待などにつながるケースも考えられる。
子どもの心身のケアには、子ども・保護者双方の環境改善が必要とされる。そこで、子どもが気軽に来られる場所を提供し、ボランティアと一緒にのびのび体を動かしたり、心の中にあるものを吐き出してもらう「みちくさルーム」という活動を実施。長期定期的に行うことで「また来てくれる」という安心感をもたらしながら、子どものストレスを軽減させることを目的としている。また、一時的に子どもを預かることで保護者は子どもから手が離れ、その間は休憩することができる。子どもと向き合いながらも、保護者のケアも含めた活動と考えて実施している。
【活動の内容】
子どもの憩いの場「みちくさルーム」は、2011年10月より定期的に実施、2013年4月現在、陸前高田市内3地区で行っている。実施日程は地区により異なるが、毎月隔週土日、月に4日間の活動をベースとし、午後2〜4時の2時間を活動時間としている。
活動内容は、学生ボランティアと連携しての遊びや学習のサポート。地域の公民館などのパブリックスペースをお借りし、その中で大人が見守りながら子どもたちがのびのびと遊び・学べるようにしており、学童クラブのようなイメージである。
遊びの内容はボランティアによる企画をメインとしている。例としては、季節に応じた催し(ハロウィンパーティ・クリスマスカードづくり・新年の干支を描く、ひな飾りづくりなど)や、その他子どもが楽しめる様々な企画(しっぽ取りゲーム、せっけんづくり、たこせんべいづくり)などがある。内容によっては地域の大人にも呼びかけ、保護者も一緒に楽しみながら実施する回もあった。そういった企画ベースのものに加え、子どもに馴染みのある鬼ごっこやボール遊びなどの子どものやりたいことに応じる形で、より日常に近い遊びをすることも多い。
また、特別企画として、バスで遠足も実施。広田町は地区のコミュニティセンター等が流され、通常の活動を狭い集会所で実施しているので、広田町の子どもたちを隣の大船渡市のアスレチック施設へお連れし、屋外で思い切り体を動かしてもらった。他に特別企画として、米崎町の松月寺という廃寺を使い、お絵描きワークショップを2回実施。画家の講師を招き、似顔絵を描いたり、地域特産のりんご畑を描いたりなど、普段できない体験をともにした。
学習面でのサポートについては、学生ボランティアが宿題などでわからないところをお手伝いする形で実施した。気仙町においてはほかに学習支援団体が入っているため、「みちくさルーム」は体を動かす・遊ぶといった棲み分けが子どもたちにされているようで、学習をする機会は少なかった。3地区それぞれで地域の実情に合わせ、子どもの要望に応えてサポートする形で行った。
継続的・定期的に実施することで、「みちくさルーム」が地域に根付き、子どもたちも楽しみにしているようである。子どもから「みちくさがないとつまらない」「次は何日だよね」など、みちくさルームが子どもたちの生活リズムの中に定着してきている。学校からの情報によると、学校での様子とはまた違う顔を見せる子どももいるようで、家庭・学校のように制限されない「みちくさルーム」で自分を出し、ストレスを発散しているようなところが見受けられる。開催地区3地区のうち2地区では学童クラブがなく、学校・家庭以外の居場所が少ないため「第3の居場所」として機能していると感じる。また、参加する子どもは常連の子が中心だが、親戚の関係で他の地域から来る子どもや初めて参加する子どもなど、広がりを見せている。活動内で、高学年の子が低学年の子の面倒を見ることもあり、子どもどうしの繋がりづくりや心の成長にも寄与し、みちくさルームの意義を感じている。また子ども個人の様子では、少しずつ表情が明るくなったり、発言が増えた子、逆に以前よりも感情が不安定になりがちな子など様々である。それは、ストレス反応に個人差があり子どもの心のリズムがいつ乱れるか分かないことや、家庭環境の変化も直接的に影響することから、その時その時の子どもに対応することが必要ということで、継続的な居場所の重要性を感じるところである。
また、保護者からは「子どもがいつも楽しみにしている」「仮設は本当に狭いので、こういった場所があって助かる」「1年位で終了すると思っていたので、継続してくれて有り難い」などの声を頂いており、保護者のケアにも繋がっていると感じる。また、会場近隣にお住まいの方には「震災以降、子どもの姿が前よりも見えなくなった。こういった機会で、子どもの声が聞かれるようになって良かった」との声があった。子どもが元気な姿を見せることで地域の大人にも活力を与え、ひとつの成果であると感じている。
<寄付者へのメッセージ>
皆様のご支援が、子どもたちの笑顔につながりました。そして、子どもの笑顔・元気な姿は、被災地域の宝であることを実感しております。誠にありがとうございました。今後もどうぞ被災地・子どもたちにご関心をお寄せいただき、長期的にお見守りいただけたら幸いです。
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