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子どもサポート基金助成団体レポート

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>2013年度第4期

山形避難者母の会

村山地区ふくしま子ども未来ひろばの発展的継続運営
避難者の子どもの一時預かりサポートと母子避難者交流サロン、未就園児のためのスタディプログラムの運営。地元カウンセラーや山形大学と連携し、子どもたちのメンタルケアを含めた事業へと発展させる。

村山地区ふくしま子ども未来ひろばを3月に移転し、①未就園児のための一時預かりサポート事業、②母子避難者交流サロン、③小・中学生のためのキッズスクールサポート事業を3つの柱として運営。ひろば運営主体である会の組織基盤強化と①と②の事業に財団からの助成を使用。

基本情報

活動期間 2013年 4月 ~ 2013年 9月
支援人数 村山地区避難者3,229名、置賜地区2,438名のうち、母親世代と子どもたちが対象。 母の会の登録会員数は現在179名
活動人数 スタッフ 6名、ボランティア 14名
連携団体 緑水の森 代表 大谷哲範
福島県原子力災害対策総室 県外避難者支援課山形県駐在 中木 秀夫
特定非営利活動法人 福島ライフエイド

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活動の背景/内容

活動の内容
山形県は全国一避難者の受け入れが多い県であり、現在約1万人の避難者が生活している。県庁所在地である山形市は約4300名、1350世帯が生活しており、その周辺の天童市・寒河江市・上山市などにも多くの避難者がおり、村山地区では県内の7割の避難者を抱える。その95%が福島からの原発避難者であり、殆どが避難区域外からの自主避難・母子避難者である。被災地3県全体をサポートする市の交流支援センターは、平等性を配慮すれば行政の窓口的対応に留まり、母子避難者支援に特化した施設がどうしても必要なエリアである。
山形県内は広域避難者が集まる場所の中では定住希望者が非常に少ない特殊な地域であり、避難している母親たちは様々な理由から福島へ戻る、戻らないで日々心が揺れていて不安定な状態である。避難先でかかる二重生活の金銭的負担は平均10万円であり、経済的に困窮し精神的にも追い詰められ、そのストレスがどうしても立場の弱い子どもたちへ向かっている。
 昨年度福島県からの助成を受けて各団体と協働で運営してきた「村山地区ふくしま子ども未来ひろば」であるが、月間約500名弱ほどの利用者があり、母子避難者にとっての憩の場となっている。未だに毎週、避難してきてだいぶ経つが交流会に参加したことがないという母子避難者が一人、二人と来訪している。  
また、比較的線量の低い宮城県沿岸部やいわき市などから放射能汚染を心配し避難してきた母子なども来訪している。
子どもと二人の生活から、交流会や子どものレッスン等で顔見知りになった母親たちがそれぞれの密接なコミュニティを作り、避難者同士の交流が図れるようになると様々な不安をお互いに相談し合うことで徐々に安定し、その子どもたちも学校以外の友達が出来て笑顔になってくる様子をたくさん見てきた。
ひろばで行っている一時預かり事業などは母親たちのそうしたストレスを軽減するためのリフレッシュを目的としたものだが、今年度運営してみた結果、母親同士の託児付き交流会や親子参加できるイベント等の方がニーズがあった。
また、ひろばは母親同士の居場所、話す場、未就学児から小学校低学年の憩の場にはなったものの、小学校高学年から高校生までの子どもたちの支援がまだまだ手薄である。今後はベースとなる事業を継続してゆくほか、ひろばを行き来している子どもたちから提案のあった、「子ども会議」なども専門のカウンセラー等と連携しながら慎重にかつ早急にすすめ、子どもたちが友人を作り、本音を吐き出す場所をつくらなくてはならないと思われる。
さらに、今年3月には福島県へたくさんの方が帰還予定となっている。帰還が可能でない避難者を除く自主避難者のうち、約2割ほどが帰還した。帰還する避難者は、山形へ週末だけでも保養に来たいというニーズがあり、土日の帰還者と避難者との交流事業も展開、帰ったお母さんたちの受け入れ先も必要であると思われる。
将来的に帰還が決まっている家庭の場合山形になじんだのに帰らなくてはならないという避難母子の心理的負担も軽減できるよう、また、郷土愛を忘れたくないという長期避難者のニーズに沿うよう、故郷福島を感じられる実家のような居場所が必須である。
 
活動の内容
2013年3月、4月  ふくしま子ども未来ひろば5月移転オープンに向け開設準備室を設置。
 
2013年5月   5月初旬オープン、母子を中心とした交流会、未就園児のための一時預かり開始。
           帰還した登録者も多くいることを踏まえ、再度登録会及び子育て相談会を行う。
           要望の多かった、「ママのためのADR相談会」も開始。
           日本リトミック研究センター福島第一支局の先生方をお迎えし、未就学児のためのプログラム「リトミックdeあそぼ」開催。
 
2013年6月   毎週木曜日、ママだけの時間作り①かふぇの会(当初はmama’s cafe)開始。
           ※予定ではAhahaの会としていたが、わかりにくいということでかふぇの会とした。
           ママのための時間作り②アルソア化粧品株式会社様と連携し、エステ体験会を開催。
           ママチャレショップ隊による、「mamaガーデン」の開催。
 
2013年7月   よぞらの会にて、ハグモミ&ロディヨガワークショップを開催。  
 
2013年8月   学童プログラム「夏休みお預かり教室」を7/23~8/22まで開催。
 
2014年9月   NPO法人アジェンダやまがた様のご協力を得て、未就園児のための「音楽ひろば」開催。
 
活動の成果
2013年5月7日オープンより、9月末日のひろば総来場者数は、2,511名。
 
未就園児の一時預かり
5月から開始した一時預かり事業に関しては、月の利用者が約20名、2013年9月までで延べ106名となった。予定では1日5名、月15日実施、75名、5か月で375名を預かる予定であったが、想定していたよりも3年保育で幼稚園に入園する子ども、また二重生活の費用を作るために働きに出る母親が多く、保育園に入園する子どもが多かったことなどが背景となっている。また、山形市の場合は認定NPO法人IVYが、福島の避難者を対象に専門の保育園を開設しており、そちらに入園する子どももかなり多かった(月1万円・給食付)。預けている母親はリピーターがほとんどであり、中には午前中のみパート就労についている方もいた。「パート就労では手元に生活費を残すため保育園までは高くて入れられないけれど、一時預かりを安くしてもらって慣れた先生に見てもらえることが大変ありがたい」「下の子が小さいので大変手のかかる時期。上の子をかまってあげられず、ママと言われてもイライラすることが多かった。週に数回預かれらるだけで子どもにやさしくできる。子どもも、お友達と遊べるのがとても楽しいようで、大変落ち着いてきた。」との声をいただいている。人数が少なくてもニーズがあるうちは継続していきたいと考えている。
 
ママのためのお話会
原子力損害賠償支援機構・山形県弁護士会と共催で行った「ママのためのADR相談会」については毎回定員を超えて参加者が殺到。避難している母親たちから大変好評いただいている。この相談会が母子避難・自主避難者のスタンダードな形となり、避難者が帰還後を考慮し福島県内での拠点を作るべく、連携団体である特定非営利活動法人福島ライフエイドへつなぎ、11月に福島市で開催予定である。
 
福島と避難先との懸け橋に(未就学児向け音楽プログラム)
また、日本リトミック研究センター福島第一支局の荒川恭子先生をお迎えし、「リトミックdeあそぼ」を開催。毎回20組、40名ほどの親子が参加。拠点運営をすることによって、ボランティアの受け入れ先となり、故郷福島県とのつなぎ役としても機能してきた。
 
ワーキングマザー、週末山形へ来ているパパを交えての交流会「よぞらの会」
働くママが増えていく中で、なかなか交流会に参加できないという声を受けて6月に「よぞらの会」を開催。東京からハグモミ&ロディヨガの講師を呼び、福島市で開催しているプログラムと同じワークショップをひろばで開催する。福島市や郡山市、南相馬市などでも同様のプログラムを開催していることを避難者にお知らせし、「帰還した際にまた参加したい」との声をいただいた。
 
ママが元気だと子どもも元気に!避難者の孤立防止、母親へ向けた支援
避難して2年が経過し1歳だった子どもが3歳になり、今年度は幼稚園に上がる子も多くいたため、母親だけで交流できるプログラムである「かふぇの会」を6月から開始。いつでも気軽にひろばに足を運べるように毎週木曜日を開放日とした。かふぇの会の参加者から、「ただ集まっておしゃべりするだけというのは、避難してすぐの場合は有効だけれど今は子どもが学校に行っている間に自分の時間を持ちたい気持ちの方が強い。二重生活の費用を何とかするために仕事のことも真剣に考えたい。」との意見を受け、即対応。その後アルソア化粧品株式会社様とのご縁を頂き、毎月2回無料エステ体験会を実施したり、地元山形の講師にお願いしてピラティスやヨガの教室などを実施している。避難した母親たちが自分の時間を持ち余裕を作ることによって「この時間のお蔭で、子どもにやさしくできる」「避難先での悩み事をここでできた同じ境遇の友人と共有できてとてもすっきりした」などの声を頂いている。こうした地元で活躍している支援者の方を通じて、避難先住民へ発信してもらい、避難先の理解を得てもらい風化を防止するのに一役買っている。
 
<本来の支援の目的と、今後の支援について>
母子のためのイベント、交流会を行うことが、本事業の目的ではない。その後に子どもを遊ばせながらリラックスしておしゃべりすることにこそ大きな意味があり、この寛いだ時間から避難者の本当の声を聞けることこそが本当の目的である。施設で働くスタッフはすべて福島から避難してきている各エリアに住んでいた当事者であり(福島市、南相馬市、郡山市、二本松市など)、当事者だからこそ遠慮せず相談できる部分があり、そのスタッフもまた友人たちの悩みを解決しようという思いでその声の先にある小さな心の動きを汲み取ってくれている。この声を丁寧に聞き、国や県、各避難元市町村など、届けるべきところに届けてゆくのが私たちの会の一番存在意義であると考えている。
避難者が避難者でなく通常に戻り、自らの生活を取り戻し幸せになろうという気力を持ち、自立に向かっていくことを手助けすることこそが、当事者が本当に望む支援であると確信している。
最後に。私たちのような当事者団体が抱える問題は、責任者帰還後にどのように組織をつないでゆくかということである。今後はJCNなどと連携しながら、母子避難者・自主避難者全体の問題を解決できるモデルケースを作れるよう尽力したい。
 
私たち山形避難者母の会は、福島から避難した母親たちのみで作った当事者団体です。山形に共に避難をしてきた子どもたちの生活が少しでも素敵なものになるよう、母親として自分の子どもたちにしてあげたいことをスタッフの声、利用者の声に丁寧に耳を傾け実現してきました。山形県は福島からの避難者が9割以上でそのうち避難区域外からの自主避難者が6割以上を占めています。まだまだ除染が完了していない福島県内での子育て環境は決して万全とは言えず、子どもたちを伸び伸びと育てるために避難を継続したい方がたくさんいらっしゃいます。
今回、公益財団法人東日本大震災復興支援財団様から受けた助成で、そんな福島からの母子避難者・自主避難者の方たちの交流拠点である「村山地区ふくしま子ども未来ひろば」の運営基盤強化及び母子のための交流サロン、未就園児のための一時預かり事業に使用させていただきました。月間約400名ほどの母子がこのひろばを訪れ、様々なプログラムに参加し、その後子どもを遊ばせながら数時間、お茶を飲んで当事者同士が避難生活の悩み事などについて共感し合い、共に泣き、笑い、いかにしてこの難局をのりこえたらよいかお話してらっしゃる姿をよく見かけております。自分たちの拠点があるからこそ、「話す」ことによって消化し、「共感」し合うことによって乗り越える力を得られています。
子どもが元気でいるには、その親もまた、生き生きと元気でいなければならないと私たちは考えています。
今回の原子力災害についてはまだまだ長い問題として子どもや孫たちの世代まで続くことを覚悟しておりますが、少しでも今の子どもたちに背負わせなくてはならない荷物をその親世代として軽くしてゆくことが使命だと感じております。いつか避難生活が終わり、心から安心して故郷に戻れることを心から願っております。それまでどうか、私たちのことを心にお留め置きくださいますよう、心よりお願い申し上げます。本当にありがとうございました。
 

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