子どもサポート基金 子どもサポート基金こども∞感ぱにー

2013年12月05日

みんなで記念撮影。.JPG

石巻市渡波地区に住む子ども達のための、黄金浜ちびっこあそび場の運営サポート

2011年7月より「黄金浜ちびっこあそび場」の再建と運営サポートを行い、2012年4月地元の方が中心となり地域でこどもを育てる「わらすこ会」の立ち上げを共に行った。現在は、この会の運営サポートを通して、子どもの心と身体のケア、子どもを中心とした地域住民の交流の場と居場所つくりを行う。

 合計47回のあそび場を開催し、子どものべ1152名・地域住民471名の方が黄金浜ちびっこあそび場に訪れた。1回平均は子ども24.5名・地域住民10.0名となり、前年度の子ども17.1名・地域住民3.0名からあがった。子どもにとっても大人にとっても「地域の居場所」として根付いていっている。また、地域住民の参加が増え「地域で子どもを育てる」関係づくりが進んでいるとともに、地域住民主体でのあそび場運営の一歩を踏み出した。

基本情報

活動期間
2013年4月 ~ 2013年9月
活動地域
石巻市渡波地区黄金浜
支援人数
のべ1623名
活動人数
スタッフ 3名、ボランティア 7名
連携団体
  • わらすこ会
  • 石巻市社会福祉協議会
  • 石巻市教育委員会

写真

  • 暑い夏はプール!その場で着替えだす子も♪.jpg
    暑い夏はプール!その場で着替えだす子も
  • 雨の次の日は本気で水あそび。.jpg
    雨の次の日は本気で水あそび。
  • みんなで近所の方にお水をもらいにいきます。.jpg
    みんなで近所の方にお水をもらいにいきます。
  • あそび場の安全点検を一緒に行う子ども。.JPG
    あそび場の安全点検を一緒に行う子ども。

活動の背景・内容

活動の背景

現状と課題
≪現状≫
①震災後、子どもたちのあそび場は、仮設住宅や瓦礫の集積所となり、遊び場がなくなってしまった(※1)震災のショックに加え、身体を十分に動かせず大きなストレスを受けている子ども達の発散方法は『遊び』。2011年6月に黄金浜・東黄金浜の保護者や黄金浜の住民の方から要望があがったことをきっかけに、当会スタッフが所属していた「め組JAPAN」が「黄金浜ちびっ子広場(震災前から既に公園だった場所)」の整地を行った。遊び場の整備や遊具つくりについて、地元のお母さん方と話し合いを設けたが、「生活を立て直すことに精一杯」「わかっているけど子どものために時間を取ってあげらない」「あそび場の運営をお願いしたい」という要望を受け、2011年9月10日よりめ組JAPANが遊び場を開催している。常駐スタッフ2名とボランティア(2~3名)で毎週末に子どもたちが遊べる場所の提供を続け、共働きや片親の子ども達が毎週末楽しみに来るようになったことから、子ども達の居場所の一つにとして地域に定着しつつある。
なお、震災直後は多くのボランティア団体が渡波地区に入り、様々なイベントが開催されていたが、震災から2年が経とうとする現在は殆ど見られなくなった。
※1 あそび場の現状
公園数:石巻市全体→約30%減少 渡波地区→震災前は36か所あったが、震災後の集計は不明である。ただし、把握しているだけでも仮設になった公園は4か所あり、海の近くの危険地区や、修繕・設備が復旧していない公園などが多数あり、事業対象地における子どもの遊び場は激減した。
 
②渡波地区には「渡子連」という子ども会があったが、被災と被災による児童数の減少により活動を中止しており、地域住民と子ども達の交流の機会が殆どないことから、2012年4月に地域住民が新たに「わらすこ会」を設立した。“地域で見守る子育て”を目的として、あそび場で一緒に子どもの遊びを見守っている。
 
③渡波地区に住む児童が通う小学校は、震災の影響で現在は使用されておらず(2014年度より再開予定)、児童は住む地区からバスで30分ほど離れた稲井中学校敷地内に建てられた仮設校舎に通学している。バスの時間に合わせて下校しなければならないため、渡波地区の児童は稲井小学校(同じ敷地内にある小学校)児童が遊ぶ姿を横目に見ながら下校しなければならず、家と学校の往復だけの遊びのない毎日を送る児童も多い。
※学童保育は、稲井中学校の仮設校舎1か所のみ
 
④現代社会の傾向として、学校や家庭など、集団の中で、子どもに対して「~してはだめ」「~でなければならない」という規制が多く、自分で考え判断し挑戦する機会が少なくなっている。また、津波で樹木などが流され、子どもたちは自然のものに触れて遊ぶことがなくなった。子どもの好奇心を尊重し、挑戦して成功する喜びや、失敗して考えることが子どもの成長には大切であることから、それらを体験できる安全な環境を作る事が大人の役割と考え、①の遊び場では2名のスタッフ(保育士)を配置している。
⑤遊び場における子どもの様子として、平気でものを壊し、食べものを捨て、ごみを捨てるなど遊び道具や食べ物を大切にしない場面をよく目にし、モノへの感謝の気持ちが希薄になっている事がわかる。これは、震災後の支援による「捨ててもどんどん物資が届く」という、モノに溢れたことが感覚のマヒを引き起こしているように思える。山のように届いた高価なおもちゃが使い捨て状態になり、おもちゃの受け入れを中止した避難所もあったくらいである。
また、ボランティアに対し「どうせすぐ帰っちゃうんでしょう」「もう来ないんでしょ」という子どもの声が、遊び場を始めた当初によく聞こえた。ボランティアは満足して帰るが、残された側には、空虚感やさみしさ、最悪な場合は捨てられた感が残ってしまうといった、支援が裏目に出てしまうケースもがあり、人に対する信頼や感謝の気持ちが薄れているなど、心のマヒも懸念される。
 
⑥遊び場の提供により、地域の大人も集まり、子ども時代にかえって日本の伝統遊具での遊び方を子どもに教えたり、大工道具の使い方を教えながら一緒にもの作りや野外での調理を楽しんだり、子どもが遊ぶ姿を見ながらお茶を飲んでおしゃべりすることなどをとおして、多世代にわたる交流が生まれている
 
⑦保護者からヒアリングしたところ、生活の立て直しや仕事で疲れているところに、休みの日に子どもが家にいることで疲れてしまい身体が休められないという声があった。子どもが安全に遊べる場所があれば、保護者は安心して子どもを送り出せる。また、常駐スタッフに子育てについて相談しにくる保護者もいる。
 
≪課題≫
①遊び場開始当初は、関わるのが難しいと話していた保護者も、現在、少しずつではあるがあそび場に出向き、子どもの遊びを見守りながら、他の保護者との交流する姿がみられるようになってきた。“わらすこ会”は、震災前の“渡子連(子ども会)”のように「地域で行う子育て」を行うことを目指しており、当会はその運営サポートの要望を受けている。
 
②震災からもうすぐ2年が経つが、同地区のあそび場が増える(元に戻る)様子がないため、今後も遊び場の運営を継続する必要がある。また、震災の精神的ショックや親子関係の不破などにより問題を抱えている子どもに対するケアの必要性も高いことから、今後は心のケアを必要とする子ども達の見守りにも力を入れ、遊びを通じたストレス解消法も取り入れていく。
 
③地域に根差した長期的なサポートを行っていくためには、常勤スタッフの地元雇用が必要とされる。それに向けて地域住民のボランティア受け入れやスタッフ養成のためのインターン制度を取り入れていくことが必要である。冬季の子どもの帰宅時間は4時半だが、夏になると5時になり、バスで帰宅した後にあそぶ時間ができることから、夏季には放課後のあそび場も開催する予定。
 
④当団体の遊びに関する概念は、「子どもの遊びは、自分で判断し自分の責任で遊ぶ」であり、子どもの意思をもっとも尊重し、安全に遊べる環境作りをすることが大人の役割であると考え、遊び場でのプレーリーダー(あそび場スタッフの事を言う)の常駐が必要不可欠である(例えば、子どもが走って転ぶのは当たり前だが、そこに釘が落ちていたら大怪我に繋がるため、釘を拾う。大工仕事を手伝うのではなく、道具の正しい使い方を教えるなど)。
また、自然の中に遊びはあり、多くの学びは自然とともにあると考えている。この遊びの考え方は、全国的に見れば取り入れている地域も増えてきているが、石巻にはまだ殆どない。自己主張のできない子ども、協調性のない子どもが増えてきているといわれる現代社会において、このような子育てに同調し、見守れる大人を増やすために、地域住民(中高生から)のボランティアの受け入れやインターン制度を導入して次世代を担う若者の養成を行い、この遊びの概念を地域に根付かせたいと考えている。
 
⑤震災により地域のお茶飲み場や、一緒にお茶飲みをした友人がいなくなるなど、地域のコミュニティが崩壊してしまったことから、再構築に向けて、子どものあそび場が多世代交流の場となるように、お茶飲みスペースや屋根つきのテントの設置などを“わらすこ会”とともに行っていきたいと考えている。
 
⑥子ども同様、大人も震災時の精神的ショックから立ち直れていない方や、震災による生活環境の変化などによりストレスを抱えている保護者が多い。地域の安全なあそび場が子どもの居場所になる事により、保護者に休息時間を提供することが可能となり、保護者のケアにもつながる。
 

活動の内容

■活動時期
2013年4月~9月の毎週土・日10:00~16:00
■活動内容
「黄金浜ちびっこあそび場運営サポート」
子どもの「やってみたい」(大工道具を使って穴を掘っての秘密基地作りや雨が降った後の泥遊びなど)を尊重し、それができる環境の提供とともに、地域住民の交流や情報交換の場となるような居場所作りを“わらすこ会”と行う。また、ボキャブラリーが少なく、大人のようにストレスを言語で表現して解消することができない子ども達は、遊びのなかでの「ごっこ遊び」(津波の再現をして逃げる遊びも行っている)や、自分が土や木材で作ったものを壊して楽しむ遊びを繰り返すことで、心の中で抱えるストレスを解消しているため、これらの子ども達の遊びを安全第一に見守り、時にはカウンセリング形式で話を聞き、心と身体のケアを重視していく。地元の若者のボランティアを受け入れ、プレイーリーダーの養成を行う
 

活動の成果

■黄金浜ちびっこあそび場の開催
め組JAPANから活動を引き継ぎ、黄金浜ちびっこあそび場の運営を47回行いました。子ども・大人の人数ともに昨年実績を上回ることができました。また、当会に新しく東京からプレイリーダー経験者の男性スタッフが入り、あそび場の環境整備(子ども達が作った遊具の安全管理や資材置き場や子ども達が屋根に登る倉庫の屋根の強化など)を行うことができより安全・安心してに遊ぶことのできるあそび場になりました。また、男性スタッフの加入により遊びの幅も広がり、男の子の参加者も増えました。
残念なことに、この地区の公園の整備は進んでいないのが現状です。
 
■わらすこ会の運営サポート
黄金浜ちびっこあそび場の運営は「わらすこ会」が行い、「こども∞感ぱにー」がサポートしていますが実際のところ当会が主になっていました。しかし、あそび場の草抜きや雨水システム作りなどをわらすこ会の方が特技を生かし、相談には乗りましたが当会メンバーがいなくても行ってくれました。台風が来た際も、台風対策を共に行い、台風が来た際の状況の報告などもわらすこ会のメンバーの方が連絡をくれまいした。また、あそび場の保護者の方々からも「いつもお世話になっているから、手伝うことあったら教えてね。」という言葉をもらいました。
今回の助成期間内に行った6月のお楽しみ会(BBQと自分だけの映画館づくり)は当会主体で進めたのですが、11月9日に行う芋煮会はわらすこ会の方が会議の進行をおこない進めました。芋煮の材料持ち寄りを当会は1品で良いかなと思っていましたが、わらすこ会のお母さん方が2品にこだわり2品となりました。共に前に進んでいることに笑みがこぼれました。また、当会が作成したパンフレットにミスがあり、約1万部のパンフレット訂正シール貼りもわらすこ会方が行ってくれました。
 
■居場所としてのあそび場
プレイリーダーの人件費を助成して頂けたことにより、開催時に安定してプレイリーダーの配置が出来ました。「同じ顔の大人がいつもいることが子ども達の安心感につながる。」という考え方のもと居場所としてのあそび場を目指している当会の理念を達成することが出来ました。人数が少ない時などには、子ども達が学校のこと家のことなども話してくれます。全ての問題を解決できないが、子ども達が困った時に「助けて!」と言える環境を作っていきたいです。最近は、黄金浜の子ども達が、隣の地域の鹿妻で行っているあそび場にも来るようになっています。
また、震災時3.4年生だった子ども達が5.6年生になりあそび場に来なくなったり、来ても当会スタッフを避けながら遊んだり、物を壊したりします。彼らが何かを抱えていることは見えますが、フォローできていない(閉ざしてしまっているため)のが現状です。しかし、彼らがどんなに閉ざそうともあそび場やプレイリーダーは開き続けて、彼らの心に声に耳を傾け続けたいと思います。
 
■保護者のケア
震災を機に保護者の方の生活環境も変わり、共働きになった家庭や震災時の片づけなどから体調を崩されたりしています。あそび場に子ども達が来ている間にゆっくりとした時間を過ごすことができます。また、子ども達が休みの日に働いているお母さんから「あそび場があるから安心して仕事にいけます。」という言葉をいただきました。週末のあそび場は10:00~16:00まで開催しているため、お昼ごはんもプレイリーダーと食べることもできます。1人でご飯を食べないといけない子ども達には、お弁当をもってくることや食材をもってきて一緒に作ることを促しています。
また、保護者の方もあそび場に顔を出してくれ子ども達が遊ぶ姿をみながら子育てや生活のことなどをはなしてくれます。「小さい子供がいて、上の子を外に遊びに連れていってあげられないから助かります。」という声を頂きました。この些細なコミュニケーションをとり続けることが、何かあった時にプレイリーダーに話してくれる基盤だと思っています。
 
■地域住民の居場所としてのあそび場
「活動実績概要」にも記述したように子どもだけでなく、地域住民の方があそび場を訪れる人数も増えた。環境整備も共に行っていくことができ、着実にみんなの居場所になっている。また、子ども達もあそび場開催日以外でも、あそび場で知り合った高齢者の家に尋ねるなどしており地域の交流のきっかけづくりをできた。また、ゆっくり座る場所が欲しいという地域の方の声をうけ東屋を今年中に子ども達と一緒に作る予定をしている。
 
■子ども達の自主性
「自分のことは自分でやる。」というあそび場の約束の中で育った子供たちは、何でも自分たちでする。あそび場畑で収穫した野菜も自分たちで料理する。その際は、薪を作り、火をおこし、包丁も使う。プレイリーダーは「危ないからダメ!」というのでなく、道具の使い方を教え見守る。
また、昨年子ども達と企画し地域住民の協力を得てハロウィンパーティーを行った。今年は企画しなかったが、子ども達が自ら企画し、地域住民の方の家を訪ねたことを教えてくれた。何の連絡もなしに来たことに、地域の方は驚きながらも笑顔で対応してくれました。
 
■プレイリーダーの育成
石巻専修大学に出向き、何度も呼びかけたが反応がほとんどないのが現状です。そんな中でも、9月より1名の大学生が継続的に当会に来てくれています。10月下旬には子ども支援を行っている石巻の6団体と「プレイリーダー育成」の会議を行いました。
 

寄付者へのメッセージ

この度は、当会の活動を応援してくださりありがとうございます。震災から2年半以上が経とうとしていますが、子ども達はまだまだ厳しい環境の中にいます。仮校舎での授業のため放課後の遊ぶ時間がなかったり、他校の校庭に仮校舎を建てているため校庭で遊ぶことに気を遣ったりと、子どもながらに気を遣いながら過ごしています。あそび場の子ども達から「学校嫌だ!」という声を聞くこともあります。また、行政に関しても生活再建が優先ということもあり、子ども達のことはまだまだ後回しになっているようにも感じます。また震災当初、小学生だった子どもたちが中学生になる中で攻撃的になっていたりと変化が見られます。
厳しい環境の中でも、元気で笑顔いっぱいの子ども達。
彼らが石巻の素敵な未来を作っていくと信じています。
彼らがほっと安心して過ごせる居場所づくりを今後も地域住民の方と作っていきたいと思いまので、今後ともよろしくお願いいたします。
ほんとうに、ありがとうございます。
 

子どもサポート基金 子どもサポート基金 活動レポート一覧 子どもサポート基金 活動レポート一覧 活動レポート トップページ 子どもサポート基金 活動紹介